をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

サブエクリプスの存在

前回は嘴の黒斑から雌雄判断してみようという趣向でお送りした。
当然これはメラニン色素の増加時期(繁殖羽移行期)に特に有効な方法であって、
性ホルモンが下降する時期には効力を失う。(未熟個体より成熟個体に顕著)
多くの方は図鑑の記述にのっとって嘴の色で性別判断しようとしがちなのを警告
したまでのことです。

今回は嘴からわかるメラニン色素の分布パターンで知るもうひとつの秘密を紹介
しようと考えたのだけれど、風邪で画像が間に合わず後日紹介することにする。

自身も何の疑いもなくハシビロガモの繁殖羽移行期の一時期の羽衣を標記の
サブエクリプスとしてきた。
ハシビロガモオス幼鳥
Northern shoveler male juv. early Nov. Matsubara city ハシビロガモオス幼鳥

ハシビロガモメス幼鳥
Northern shoveler female juv. early Nov. Sakai city ハシビロガモメス幼鳥

しかしながら、時折11月初旬にして既に繁殖羽に移行し終わった個体を見たり、また
年が改まってかなり経っても上のような外観のオスがメスと誤認されている。
以前にも憤慨した雑誌のカモ特集記事内容への懐疑はむくむくとハシビロガモの換羽
についても頭をもたげだした。

私自身の認識において、マガモ属の成鳥羽移行過程はハシビロガモを除いて一年以内
に終了する。繁殖もこの期間内で可能となる。 ただし雨覆いなど一部外観から容易に
観察できない部分に幼鳥パターンが残存し、この時期の状態を一般に幼鳥羽あるいは
第一回繁殖羽と呼んでいる。
一部の幼鳥は第一回繁殖羽へと移行せず、春先まで幼鳥羽の外観を保持するものが
いて、これらは栄養不良などの外的要因から換羽不全を引き起こしていると思われた。
しかし、この考えは誤りで、秋型のチョウ(タテハ類など)が成虫で越冬するように、遅く
生まれた幼鳥のグループには換羽のスイッチが入らず越冬時外観が早くに生まれた
幼鳥グループの第一回繁殖羽と異なるのではないか?という疑問です。
遅く生まれるグループの代表例は初回繁殖の若いメス親に育てられるグループ。
5〜6月に孵化したグループに比べ2〜3カ月成長が遅くなるはずだ。

以上の推測的観点からハシビロガモの繁殖羽移行完了時期のシミュレーションを
してみると、老鳥に近いグループは早期に換羽を終了し、若い個体を含めた大多数
の換羽終了時のピークは2〜3月になるであろうと予測できる。
つまり年齢別の換羽追跡がこれまでなされてきたのか?という 第一の疑問。
それに、これほど特異的な換羽様式なのに、黒田博士や外国の資料やサイトから
この件の根拠を探しえないのが、 第二の疑問なのである。

このサブエクリプスの論拠となった資料をご存じの方はお教え頂けると幸甚です。

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マガモ属嘴の点状黒斑

いやー急に寒くなりましたね
暑がりなもので以前は布団を着るのが2月のみ、今も12月から2月までです。
そんなわけでTシャツ・短パンで何も被らず寝たもので風邪気味です。

ということで、昨日アップ予定の記事が本日にずれ込みました。

皆さんのお近くでも随分カモの姿を見る機会が増えたことでしょう。
今日はかなりの確率でオス・メスを見分ける方法を紹介しましょう。
ただし、かなり近くで観察できるか、スコープが使える方がいいでしょう。
とりあえず、最近のハシビロガモの画像を見てください。
ハシビロの換羽による年齢推定は不正確ですので若い個体=若鳥としています

ハシビロガモ雄成鳥
ハシビロガモ雄成鳥

ハシビロガモ雄若鳥
ハシビロガモ雄若鳥

ハシビロガモ雌成鳥
ハシビロガモ雌成鳥

ハシビロガモ雌若鳥
ハシビロガモ雌若鳥
どうでしょう、雌の嘴には小さな黒斑が多数見られますね!

コガモ雌雄差
コガモ雌雄差
ピクセル等倍画像のためやや画像がボンヤリしてますが嘴の黒斑差は明瞭ですね

トモエガモ雌雄差
トモエガモ雌雄差
今季、同時期の雌雄画像がまだないので昨年12月のトモエガモ画像からです

ヨシガモ雌雄差
ヨシガモ雌雄差
ヨシガモの嘴=黒いだけではわからない差が感じられませんか?

嘴による雌雄判断、絶対的とは言いませんが、翼パターンや虹彩色などと組み合わせると
かなり合理的に性別判断、年齢推定に使えそうではないですか?
黒斑が見えない種にカルガモ、ややわかりにくい種にヒドリガモなどがありますが、基本的に
マガモ属に共通の要素であることに違いはないでしょう。
なお、メスの嘴黒斑は繁殖羽期でも上嘴と下嘴の合わせ目、基部から1〜2cmのところ辺り
に出やすいようです。 ただ、秋期ほど分かりやすくはなくなります。

図鑑やご自分の写した画像と比べてみてください。ハシビロガモやオカヨシガモなどは
オス幼鳥がメスとして紹介されていることも多いので、なかなか面白いですよ。

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羽抜けと換羽時期

今日から11月、初日から冷たい雨が降っている。
常日頃、機会があれば探求してみたい内容に換羽がある。

「未見カモを推認する」記事で取り上げた内容と「ヨシガモ飛来」記事のメスの風切羽欠損が
見事に関連づいた。また偶然この時期に拝見した掲示板のメス・ジョウビタキ画像とある論説が
これら換羽にまつわる事象を合理的に理解するのに非常に役に立ったので記事にする。


まず、前回は記事に書くことがなかったビロードキンクロの分類に関する事柄
下線の呼称は便宜的に私が使用する和名なので誤解のないようお願いしたい。

ビロードキンクロの英名は普通Velvet scoterと記されている。
しかし、この英名では国外の方とのコミュニケーションにおいて誤解を生ずる恐れがある。
というのは、BOU 英国鳥類学者連盟は2005年の分類勧告3報で分類定義。 

ビロードキンクロ Velvet scoter Melanitta fuscaは独立種で国内に産しない
オスの嘴に黄色は出現しても赤色は出ない。白斑の出かたも異なる。

シロハネビロキン White-winged scoter Melanitta deglandi
亜種アジアビロキンM. d. stejnegeri が国産該当種となる事実である。
属名Melanittaメラニッタ はビロードキンクロ属を、種小名deglandiデグランディは仏動物学者の
Côme-Damien Degland コムダミアン デグラン博士の人名に由来
基亜種アメリカビロキン American White-winged Scoter M. d. deglandi
亜種アジアビロキン Asian White-winged Scoter M. d. stejnegeri の2亜種より
構成される。
亜種名stejnegeriは米動物学者Leonhard Hess Stejneger レナード ヘス スタイネガー博士
の人名に由来しスタイネゲリとなる。

Melanitta fusca fusca
Melanitta fusca deglandi
Melanitta fusca stejnegeri の以上3種をビロードキンクロとするのが国内分類。

またよく目にする画像をオスなのでは?とした根拠は

メスの白斑面積は大きく、ぼかしをかけたような輪郭に見受けられた
一方オスの白斑は大きくなく輪郭部がかすれたように見える印象

複数年にわたり7・8月期に陸上で風切羽を換羽する姿が目撃・記録されている

該当個体の嘴は全黒色でなく、一部オレンジ色っぽい部分があり、体色は黒っぽい

・・・というような外観特徴と換羽時期が繁殖期と重なる早期なことから推定した結果。
このように推定を行う場合に注意しなければならないことに、予想される該当時期の画像と
比較対象個体の画像とを見比べることにある。
往々にして見受けられる雌雄判断の誤りは繁殖羽の画像を非繁殖羽の画像と見比べる
初歩的な誤りから発生しているからだ。

羽ばたきしても羽軸しか見えない
羽ばたきしても羽軸しか見えないメス

羽は生えていなくても、体部が濡れたら羽ばたきをするのは興味深い
風切換羽中のカモの逃避反射が飛び去りから歩き去り・泳ぎ去りに変化するのを知っている。
雛の幼綿羽時期の羽ばたき動作も濡れると反射的に行われるので、面白いと思う。
ただ右側初列風切は伸び始めている。左側は依然羽軸のみ。ここでも左右不斉の換羽だ。

【羽抜け】
「ヨシガモ飛来」記事で取り上げた風切羽の欠損したヨシガモ・メス
これと同様の現象を偶然ある掲示板で見つけた。それはジョウビタキのメスの観察例。
場所は舳倉島とのこと。
掲示板に貼られた時期の異なる写真を見て、直感的に表現は違えど同じ現象と感じた。
それは白斑のないジョウビタキというタイトルだったからです。
一昨年も目撃されたとのことで、報告者は同一個体と考えておられる様子でした。
しかし、秋に目撃後見失い春にまた目撃したという説明から、換羽の一時期・白斑の
見えなくなる個体を同一個体と認識できず見失った可能性を考えてみました。

また、黒田長禮博士が
日本鳥学会誌 「鳥」昭和12年6月 第9巻44号「コガモ1千餘羽による趨異の調査」と
題する論説でこの件に触れられ、マガモ・コガモで早い秋にのみ目撃したと記述されて
おられます。 理由は初回繁殖の母鳥が子育て後に秋冷が迫り、慌てて渡りをしたのち
越冬地到着後に換羽したからと推測しておられるのに、感激、同調しました。
博士はこの論説のなかで緑色光沢を有するコガモ・メスにも触れられているので、是非
ネットで一読すべき優れたカモ関係資料であると思います。

三列風切伸長の様子
三列風切伸長の様子

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