前回は純粋種の羽装判断、雄化雌の外観判断について私見を書いた。続編になる。
今回は交雑種と色素異常個体の外観判断について書こうと思う。
前回に前置きをしていなかったので、ここであらためて述べておくが、
これら羽装異常の個体に出合う可能性はかなり少ない。
しかし一部の組み合わせや外観の変化は意識せず出合っている場合も多い。
潜在斑の存在・・・純系種・交雑種にかかわらず両親に認められない模様(斑紋)が出現する
ことが稀にある。首輪やトモエガモのような涙条痕斑がそれにあたる。
マガモ系交雑種、オナガガモ系交雑種には涙条痕斑がコガモ系交雑種には目先の白斑等が
現れやすいので親種の推定には注意が必要だ。
【交雑種】巷間、よく言われるようなカモは雑種が多い、とか餌付けが交雑に拍車をかけているなど
ということには、ある一面を除いて賛成できない。
以下の記事は観察による推定で書いていますが、それなりの根拠はあります。
なお、該当する英語は必ずしも正式な定義に基づいていません。
種間雑種(亜種間、属間雑種等も含む)・・・Single cross hybrids アメリカコガモXコガモやマガモXオナガガモ、ヨシガモXヒドリガモ、ホシハジロXアカハジロ
などの雑種がこれに該当します。目撃頻度は場所や人により異なりますがかなり稀です。
通例オスの雑種の方が特徴が出やすく、外観的に両親の中間タイプが出現する。
しかしメスの雑種であっても両親に特徴の多い種類はよく見ることで発見可能。
アメリカコガモXコガモ、ヒドリガモXアメリカヒドリの組み合わせなどでは両親の判別も困難
なため、メスのこの組み合わせにおける雑種判断は不可能に近いと思われる。
先の冬に皇居の濠で見つけられ話題になったキンクロハジロXクビワキンクロもメスだった。
メスの交雑というと、「日本の鳥550−水辺の鳥ー 文一総合出版」のカモの雑種欄にある
6番のメス雑種はアカハジロXホシハジロまたはキンクロハジロとなっているが、嘴・頭部形状
配色からクビワキンクロとの交雑ではないだろうか?分布上は考えにくいのだが・・・
同じく5番の雑種は配色・頭部/嘴形状からアカハジロXホシハジロでなくメジロガモXだろう。
第二世代雑種・・・Second generation hybrids
I. Backcross hybrids 戻し交配系雑種(Single cross hybridsが両親種のどちらか一方と交配したもの)すみれの仲間にも交雑種が稔性(動物では妊性)をもつものがある。
無茎種のヒゴスミレXエイザンスミレ、有茎種のタチツボスミレの仲間同士の交雑種などです。
同じくカモの仲間でもヒドリガモXアメリカヒドリやマガモXカルガモの雑種、特にオスにおいて
は妊性をもつものと推定できる。オス・メスの妊性差についてはわからない。
巷間騒がれることの多いカモの雑種の正体は、これらの組み合わせに起因するものだろう。
この交配系の特徴は極めて両親種の外観に近いものの、ごく僅かに一部分が雑種起因の
外観を持ち、雌雄ともに妊性をもつ?ことだろう。そう考えると、マガモ(アヒル系含む)Xカルガモ
やヒドリガモXアメリカヒドリの多様なパターンの存在に納得できる。
また、オカヨシガモやアカハジロに首輪が認められたりするのも、この交配系種と考えられる。
II. 3-way cross hybrids 3者交雑種(Single cross hybridsと第三の種が交配したもの)上でも触れたが、一部の雑種には妊性が認められる。
ネット上でこれらの可能性のある画像を確認したが、これらの片親はヒドリガモXアメリカヒドリ
のみを確認するにとどまっている。
それ以外には下記のハジロガモ系交雑種の可能性があげられる。
A. (ヒドリガモXアメリカヒドリ)Xアメリカコガモ・・・大阪、安威川
B. (ヒドリガモXアメリカヒドリ)Xコガモ ・・・神奈川
上記2例についてAはヒドリガモ系雑種、Bはヨシガモが片親とされている
稀な飛来種、メジロガモ・アカハジロの識別とその交雑種について先の冬にはアカハジロ、メジロガモの飛来報告が各地で見られた。
しかし、これらの飛来はそう多くないことに加えて、ある意味よく似ているために、しばしば議論が
巻き起こっているようだ。それなりの機関が最初に判定すれば良さそうにも思えるが・・・。
私見による各地のカモ
アカハジロ福岡・・・オス成鳥(2年連続) 岡山・・・オス成鳥(2年連続) 京都・・・オス成鳥
高知・・・オス若鳥? 愛知・・・メス成鳥
メジロガモ茨城県 日立市?・・・オス成鳥 北海道室蘭市長流(おさる)川河口・・・オス成鳥
栃木県那須塩原市 戸田調整池・・・Xアカハジロ交雑種

ホシハジロ大阪2007年3月

種間雑種奈良2007年11月

アカハジロ岡山2009年1月

種間雑種大阪2007年2月

メジロガモ大阪2007年3月
以下にアカハジロ、交雑種、メジロガモの頭部画像を示す。
頭部周辺には種に特徴的な色・形・嘴の違いが集中して見られる。

アカハジロ頭部

交雑種頭部

メジロガモ頭部
皮肉なことに、撮影角度の違いで特有の形状差が表れていない。
メジロガモの額から嘴にかけて段差のあるところ、頭頂部の尖り具合、華奢な嘴は交雑種の
画像に表れた。
嘴基部の厚みと嘴の長さは種判断の大きな指標となる。アカハジロ>メジロガモ。
体長も水面上自然姿勢でアカハジロはホシハジロメスと同大。メジロガモはキンクロハジロメスと
同大でアカハジロが明らかに大きい。自然姿勢ではメジロガモの頭頂部に尖りを感じる場合が
多いのではないかと思われる。
細かなことだが、目の楕円形長径を結ぶ線はメジロガモで水平、アカハジロは外上がりで
(吊り目)このことがメジロガモ正面画像の面白さにつながっている。
またやや奥目傾向で他のカモより眼球が正面方向に向いている。

嘴の黒色部はメジロガモでは嘴爪よりやや大きく周囲を薄灰色が逆さU字型に取り囲む。
それ以外は全体的に暗い灰色。ただし、メスよりオスの灰色味が強い。
アカハジロの黒色部は嘴爪部分のみ、嘴辺縁部をぐるっと取り囲むように薄灰色があり
嘴中心方向にグラデーション状に暗い灰色となる。大きくがっしりした形で嘴上部のカーブは
明らかにメジロガモより深い。
体側に波状の白色部(特に胸寄り)が現れる事、腹部の白色部が広い、下尾筒の白色部が
広いのもアカハジロの特徴。下尾筒の白色部前の腹部に繋がる黒帯はメジロガモが太い。
そのため自然姿勢でのメジロガモ体側はチョコレート色ベタ一色で、羽繕い時に身体を傾斜
させない限り腹の白色は水面下で見えない。胸の赤茶色とチョコレート色の境界も不鮮明。
ただし幼鳥羽やエクリプス羽からの換羽期には羽縁が淡色でややまだら模様に見える。
上記内容を考慮した上で、以前から気になっていた2006年2〜3月のメジロガモ奈良個体
を見てみると(ホシハジロXアカハジロ)Xメジロガモの可能性がある。
虹彩の色が黄色味を帯び、嘴先端黒色部が大きく反りがやや大きいこと、腹部・下尾筒の
白色部面積、体長等トータルで判断すると同系種の3者交雑種の判断が合理的だと思う。

奈良のメジロガモと言われる個体
【色素異常】雄化に見られる暗色化以外に黒化個体の観察経験なし。
ならば白化は多いかというと部分白化やキンクロハジロのバフ変以外見たことがない。
色素異常の個体にめぐり合う可能性もかなり低い。
完全に色素の欠損したアルビノ以外にも体色が純白なものは見られる。
オシドリやクジャクなどでは観賞用に白系種の選抜?で得られた個体がいるようだ。
またメラニン(黒)、フェオメラニン(茶褐色)のどちらか一方だけ減弱、欠損する場合
があるので、場合によっては別種に見えることがある。
数年前コガモ系交雑種と思われるカモの画像を見たことがあった。
当時はカモについてもかなり未熟(現在もそうだが・・・)だったので、片親の推定に
思案したものだった。先日その画像を再度見て、少ない判断材料ながらコガモの
フェオメラニン減弱個体だと判断した。
頭部の緑色光沢部の面積が細く小さく、紺色。翼鏡の色も青色系で前後の白帯から
茶褐色が消えている。カモの色彩が地色の色素と表面構造による選択反射で構成
されることが再確認できた一例だった。決して絵の具の混色のような色彩パターンは
示さないのだ。