をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

春の池から 2.オカヨシガモ

歴史過去の記事でオカヨシガモの換羽時期が同じマガモ属よりもかなり早いことに触れた。
これは越冬地と繁殖地それぞれの緯度や移動距離等、生物地理学的要素が関与して
いるだろうことが考えられ、本州付近では旅鳥であるシマアジでは尚更にこの逆傾向が
強くなる。オカヨシガモではこのような換羽時期の十分な理解だけでなく、とりたてて雄
繁殖羽に金属光沢が明瞭でないことから、大して雑種らしい特徴は認められないにも
かかわらず、雑種ガモとの判断を下されてしまうケースも多い。 もちろん、それら雑種が
疑われるカモの中にはマガモやヨシガモに見られる首輪や頭部の淡色境界、緑光沢が
認められるものがあって、影響がまったくないとまでは言い切れないものも存在します。
Brewer's Duckと呼ばれるマガモとオカヨシガモの雑種が珍しくない地域も外国にはあり
ますし、オカヨシガモの遺伝子にはアジアのヨシガモの遺伝子が存在するという報告も
あります。しかし、問題なのは地味でシックな装いとのみ評されるオカヨシガモ本来の
雄繁殖羽の姿が正確に捉えられていないことに、その原因はあるのではないでしょうか。
 今回池で春4月を過ぎての観察でしたので、雄成鳥の嘴両側が黄色味を帯びている
ことを期待しましたが、該当個体はまだ黒いままでした。そう、換羽の早いオカヨシガモ
雄成鳥は
、早いものでは、この時期に雌の嘴のように両サイドが黄色みを帯びてくるの
がいるのです。ちょうど雄幼鳥の嘴がほぼ繁殖羽になっても嘴の両サイドが黄色いままの
個体がいるように。
※ 下線部の部分は第1回繁殖羽雄の一部はと表現すべきなのかも知れません。
3月末から4月頃に嘴両サイドが橙黄色味を帯びる個体をこれまで、換羽の早い成鳥と
漠然と考えていましたが、最近見た画像から誤解していた可能性が出てきました。
幼鳥の嘴の黒さは未成熟ゆえにメラニン色素の生成が不完全で遅くまで橙黄色を帯びず、
また早期にその下地隠ぺい力を失う可能性が考えられ、十分な観察が不足していた可能性
があります。 4月24日追記

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4月12日 オカヨシガモ成鳥ペア

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4月12日 オカヨシガモ成鳥ペア右側面
成鳥雌の右側三列風切は旧羽が残存、対して上画像の左側三列風切は脱落している。
このようにカモの換羽ではしばしば左右均等に換羽進行しないことが多い。カモ以外の
鳥においては徐々に換羽が進行したりして、一時的に飛べなくなる無飛翔期が存在しない
ことが理由として考えられ、三列風切は飛翔に際し実務的役割が小さいことがうかがえる。

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4月16日 オカヨシガモ第1回繁殖羽ペア
図鑑やイラストで紹介されるオカヨシガモ成鳥雄のつくられたイメージは、おそらくこの若い
オカヨシガモ繁殖羽外観に由来する。どのカモもそうだが、幼鳥の定義を生後1年未満の
若い鳥とした場合、幼鳥に該当する第1回繁殖羽は成鳥繁殖羽と明瞭に区別される。
しかしながら、良く似ているためにカルガモ雌雄の判別同様、同一と見なしていることが、
とても多いのです。
ざっとオカヨシガモの場合の特徴を挙げてみますと・・・
1.雄の波状斑が太く粗い上に褐色味を帯びるため体色が全体的に暗く見える。
2・肩羽の褐色味が強く、背と脇は異なる色合いに見える
3.三列風切も同様に濃色なため、一様に灰褐色味が強い(成鳥はかなり白い)
4.尾筒の黒色が不完全でところどころ、まだらで白っぽい部分がある……以上オス
5.嘴にある点状黒斑がとても小さいかあるいは見られない
6.カモやシギチドリの繁殖羽では赤褐色味が強く出るが、それらの出現が弱い
7.下の画像で示すが、雨覆のシナモンパッチがないかとても少ない
8.三列風切の色合いや形が異なるが、繁殖羽では模様が出現しやすい・・・・・メス

※ シナモンパッチ・・・ハシビロガモ雄成鳥腹部やオカヨシガモの雨覆に見られる濃赤褐色の
              羽色をした部分。一般に老成した成鳥雄ほど濃く広く大きい。また雨覆
              の赤褐色が見られるカモとして前回のコガモやアメリカコガモ、トモエガモ
              オナガガモ、が挙げられるが老成したヨシガモ雄でも見られる。 ただ、
              これらは翼帯としてわずかに見られる程度なのでシナモンパッチとは言う
              ことがない。

   模様 ・・・ 三列風切の模様に関しては以前触れたとおり、submarginal marksと判断。

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雌成鳥繁殖羽に見られるシナモンパッチ
飛翔翼上面図では雌の説明でこれを欠いているものがとても多く、意図的に描き入れが
省かれたのではないかとさえ思えるほど。雌にも大きさの大小はあっても存在します。
一部の方はこれが雄に特異的なものだと画像から判断している場合が見られる。

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雄成鳥のはばたき シナモンパッチが明瞭
シナモンパッチの大きさや濃さである程度雌雄や成幼が類推できるが定量的ではない
つまり、雨覆の色合いが濃いから薄いから、あるいは羽縁の淡色が明瞭・不明瞭で
数値的に年齢が決まるのではなく、成鳥パターンに近い第1回繁殖羽もいれば、その
逆もありうるということで、定性的価値があるにとどめるべきです。

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オカヨシガモ成鳥雄繁殖羽 右後方から

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オカヨシガモ成鳥雄繁殖羽 正面から
どうです、見る方向や姿勢、羽毛状態によって首輪が白かったり、黒かったり、頭部が
黒ずんだりと印象が変わったはずです。嘴基部の白色部も気になったり、ならなかったり。
実はこれが繁殖羽のピークと重なると先に述べた雑種問題が急浮上してきます。
多くは姿勢や個体差による構造色の出現の仕方が大きく関わっているはずです。

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オカヨシガモ第1回繁殖羽 はばたき

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オカヨシガモ第1回繁殖羽 胸のうろこ模様が成鳥に比べ未発達で体色が暗色で
しかも頭部が成鳥に比べてべたっと単調で変化が少ないですね。それに尾筒の
黒色部境界が不明瞭でぼんやりしています。

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三列風切に模様がなく一様に濃い灰褐色で嘴両サイド橙黄色に小黒斑が見え
ません。また体色が淡褐色のモノトーン系で赤褐色を帯びる成鳥と異なります。
成鳥の体色はむしろ明るく、赤褐色を帯びる部分、濃褐色の部分とメリハリが
ハッキリしています。

どうです、年齢の意識をもって鳥を見ることがいかに重要かわかるでしょう。
見本の画像がたった4羽でしかも同一姿勢でなく、遠いぼんやりした画像なので、
もひとつですけど。

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春の池から 1.アメリカコガモ

カモも最終盤となった最近、知人のブログで知ったアメリカコガモ。
一緒にいるシマアジ雄よりも、アメリカコガモ雄より気になったそのカモ・・・
アメリカヒドリにしても、アメリカコガモにしても雌雄双方がアメリカなんてこたぁ
まずない。んだけど、画像の雌が少ない知識で見るとアメリカっぽいなぁ・・・
ということで、観察に向かいました。

まずは、アメリカコガモの雌探しの発端は氏原巨雄氏のブログでの特集記事に
あるが、ことアメリカコガモは大阪で記録されたことが、まずない。
そこで諦めていたのだが、昨年末大和川でカワアイサを観察した折に周囲を
見まわすと、それらしいのがいたので撮っておいた。
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これが、その時の画像。2014年12月2日撮影
氏原氏がコガモとの相違点として挙げているのは
 第3番目に顔つき、一般にシマアジに似た顔貌といわれる
 第2番目に翼鏡上部の淡色帯の赤褐色味が強いことなど
 第1番目は? であるが、私自身は寸詰まり体形だと見る
ニシトウネン(ヨーロッパトウネン)とトウネンのように体形が異なり、アメリカは
日本にいるコガモより寸詰まり傾向で頭でっかちに見える。 その他諸々の
違いがあって虹彩が日本にいるものよりチョコレート色味が強く、しばしば尾筒
他体色が赤褐色味を帯びる傾向にある。これは繁殖羽だからというのでなく、
やや個体差の範疇に属するものと思われる。 その点から見るといい線いって
いる感じだが、寸詰まり感がなく、残念ながらアウト!
※ 寸詰まり体形というのがやや抽象的表現なので、具体的に特徴を述べると
体長に占める肩羽終端と三列風切起始部から尾羽後端までの長さがおよそ半々で
コガモの肩羽がずっと後方まで存在するのと比べて、バランスに違いが見られる。
結果的に初列風切終端から尾羽終端までの長さの差(いわゆるPP、プライマリー
プロジェクション)が小さく、コガモでは比較的大きい。むしろ、その体形的バランスの
違いを寸詰まりと表現している。4月21日追記

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4月12日 コガモ雌成鳥繁殖羽 参考

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4月12日 コガモ雌成鳥 翼パターン(別個体) 参考

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4月10日 早朝雨中で初めて自身で確認したアメリカコガモ雄成鳥繁殖羽
カモまでは遠く、雨に霞んでいたが自身が思い描いた通りのアメリカコガモでした。

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4月10日 アメリカコガモ雄と問題のカモのペア ブログで見た画像の雌カモでした。

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4月12日 この日アメリカコガモはコガモ雄2羽と共に雌2羽にディスプレイ
内1羽は例の雌で翼の状態や体形からやはりコガモ雌成鳥のようです
反り縮みするアメリカコガモ

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4月12日 水はね鳴きするアメリカコガモ

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4月12日 げっぷ動作から嘴を差し向けるアメリカコガモ

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4月12日 別グループで水はね鳴きするコガモ成鳥雄
反り縮み時に強調される尾筒サイドのクリーム色三角と側胸が並行になって「い」の字に
見えるアメリカコガモに対して、コガモ外側肩羽白線との「ハ」の字形が印象的でした。

ここで、イメージ通りのアメリカコガモとした理由として、
 1.側胸の白色縦線(鳥体から見ると白色横線)が太く明瞭
 2.細くて密度の高い体羽の波状斑(人によっては青灰色の波状斑と表現)
 3.頭部緑色光沢部分を主として囲む淡色の縁取りが不明瞭
 4.翼鏡上縁の淡色帯が強く赤褐色味を帯びる
 5.頭が大きく、寸詰まりの体形をしている
 6.尾筒両サイドのクリーム色三角と尾筒の黒色帯に次いで白色帯がない
 7.胸が水彩絵の具でいう肌色味を強く帯びる

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2月11日 大阪北部 アメリカコガモ第1回繁殖羽移行中

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3月8日 大阪北部 アメリカコガモ第1回繁殖羽移行中
冠羽の後頭部襟足部分がコガモよりやや長いのもアメリカコガモの特徴のようです

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3月8日 大阪北部 アメリカコガモ第1回繁殖羽移行中
右側面ですと尾筒黒色部前にある白帯はほとんど目立ちませんが、左には見えます 

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3月23日 大阪北部 アメリカコガモ第1回繁殖羽移行中
三列風切の下、尾筒黒色部前にある縦白線が側胸のものより細いですが見えます
少し前の記事で私はこのカモをアメリカコガモとして紹介していますが、この白線の存在や
波状斑の粗さや頭部の淡色縁取り線はコガモに近いものがあり幾分コガモの血統を感じ
るので、一点の曇りもないアメリカコガモだというわけではありません。
この辺は純粋か否かをどこで線引きするのか、難しく、アメリカヒドリでも似たようなことが
言える気がします。

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3月23日 大阪北部 コガモ雌と並んで倒立採餌するアメリカコガモ第1回繁殖羽移行中

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4月10日 倒れた芦の上で休息するコガモ成鳥雌雄 鉄分で染まり雄の胸がアメリカコガモ
のようになっている 普通コガモの胸はかなり白っぽいかわずかに肌色味を帯びる。
また胸部の黒色斑は大小不同のドット斑でアメリカコガモの大きさの揃った密な丸斑とは
異なる。

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2009年2月14日 兵庫県 コガモとアメリカコガモの雑種
純粋のアメリカコガモほど太くない側胸の縦白線、同じく純粋なコガモほど太くない外側
肩羽の横白線、及び尾筒黒色部(CAP)前の縦白線で「コ」の字を横倒しにしたように見える。
さしずめ、ズッコケ「コ」ガモ。このタイプが意外と多い。・・・大阪ではそれすら記録が少ない。

大阪府鳥類目録 2001には1990年4月に淀川中津で撮影された記録紹介あり。
南港野鳥園で1997年1月15日アメリカコガモが記録されたとあるが、詳細は不明。
奈良県で記録された2005年1月頃の竜田川での記録は問題なさそうだが、2013年
11月12日に馬見に出現した個体はこのタイプの雑種。
当時、ブログ記事を閲覧した私は2月に急逝されたらしいI氏にすぐさまメールしたので
丁寧に作成されていた鳥種別記録には竜田川個体しか記録されていない。
コガモが繁殖羽へと完全に移行するのは成鳥でも年明け頃で、観察された時期では
外側肩羽が換羽していないので、横白線は未出現。 昨年12月2日撮影の成鳥雌雄を
冒頭で紹介したので、雄の横一文字白線を見てほしい。まだうっすらとしか見えない。
逆に側胸は換羽が終了しているので多少白線がはっきりすることがあっても、太く長く
なることは考えられない。時期と換羽状況を見極めて判断することが大切です。

実はこの雑種タイプがアメリカコガモとして過去に雑誌Birderでも紹介されたことがあり
ます。1995年11月号と2011年11月号の雄画像がそうです。 いずれも編集部が
構成、写真家が画像提供する形をとっているので、細かなチェックが機能しなかったの
だろうと思いますが、お手本が間違いというのは困ります。
2011年11月号の画像には側胸には白線が入ると書かれていますが、その白線は
細く、体の中央に白線はないと書かれて図示されているのに、矢印の先にはしっかり
薄めですが白線があります。典型的亜種間雑種パターンです。 撮影された京都の
N氏には大阪北部のアメリカコガモ撮影で2月18日に初めてお会いしたので、同時に
掲載されているアメリカヒドリ雌の問題点共々よっぽど話そうかと思いましたが、何せ
初対面の方にいきなり画像に問題があるとは言いだせず、「今日はいないですよ!」
とだけお伝えして別れたのでした。 ま、この辺の間違いは外国のサイトにも見られ、
比較用に掲載している画像が雑種だったりすることもあります。
我々は、誰でも対象物が同じように見えていると思いがちですが、実は脳の処理が
重要で視力だ機材だと言う以前に、物の見え方が違っていることに気づくことが肝要
です。

1ameko412
4月12日 アメリカコガモ雄成鳥 ペアが確定したせいか2日後いなくなりました。
側胸の縦白線のみで、外側肩羽の一文字白線や尾筒サイド前方の縦白線はありません

今回アメリカコガモとコガモの違いを過去の図鑑はどう描き分けているのかと、見直し
したところ、小林重三の手になる黒田長禮博士の「鳥類原色大図説」では実物に忠実
に描かれてはいるものの識別点がほぼ浮き彫りにされておらず、小林桂助氏の原色
日本鳥類図鑑(宮本孝:画)のまるでウズラのようなカモの絵に違いが描写されている
ことに気づかされた。実に識別点の大半が漏らさず描き分けられていた。図鑑の価値
が必ずしもリアルにこだわる必要がなく、ひょっとすると富士鷹なすび氏の描くような
イラスト図鑑の方が識別には向いているのかも知れないと、ふと思った。

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雄化(ゆうか)するということ

http://ci.nii.ac.jp/naid/110003363406
Ciniiにある動物学雑誌 69(9), 277-279, 1960-09-15 マガモ雌の所謂「雄化」4例
英文抄録を和訳すると・・・
抄録中の単語 Bluba ossea は Bulba osseaの誤植と考えられる。

日本には、これまでにただ4例の雄化羽装をしたマガモ雌の採集記録が存在する。
このうち雄化個体第2例は山階博士(’48)が調査されたもので、千葉県手賀沼産で、
左右の卵巣が精巣に置き換わっていることが判明している。
残りの例については同様の現象が老齢の雌に見られ、オシドリ、コガモ、オナガガモに
おいても観察されるのは卵巣の退縮あるいは異常によるものに違いない。
気管に属する器官である骨球、つまりはオスに特有の器管はこれら雄化個体にはなく
性ホルモンに起因すると考えられる。

ここで言う骨球は著者の黒田長禮博士が日本語本文中で使用している語で、該当する
器官はJOGA第16回集会(2013)・・・日本鳥学会名古屋大会(於:名城大学天白校舎)
で小木曽 チエ氏が発表した「カモ類の鳴管の多様性」の鳴管に相当するものと判断
される。JOGAのページから写真入り概要が閲覧できます。

http://digitalcommons.unl.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1026&context=johnsgard
「Some putative Mandarin Duck hybrids」1968 Paul A. Johnsgard
University of Nebraska - Lincoln
ここにあるFig.2画像は前回記事で私が雄化オシドリとしたものにそっくりでしょう。
白黒の粗い画像ですが、著者のいうアメリカオシとの雑種とする根拠の他方の形質が
見られない、風変わりなオシドリの画像といった感じです。
一方、Fig.4の画像は私が過去に動物園のオシドリやオシドリ渡来地で雄化と指摘した
オシドリとほぼ変わらない外観をしており、白黒画像でも容易に雄化オシドリと判断可能
な個体です。

なぜ、私が上記2本の論文を紹介したのかというと、今から半世紀以上前に報告されて
いながら特定の方の意識の中にしか雄化という現象は存在しなかったからです。
もっと言えば、欧米に先行して雄化を報告した先達が日本に存在したのに、人々の意識
から半ば消え失せ、中途半端なオスの羽衣はすべてエクリプスだとして見て、見ぬ観察
をしてきた観察態度を至極残念に思うわけです。
あとの米国論文の推定は現在ではおそらく支持されておらず、明確なオシドリとアメリカ
オシの雑種はまず自然界に存在しません。同じ属Aixに含まれるのになんでや? そう
感じても不思議ではないですが、実のところ容姿は似ていても遺伝的には遠いのです。
以前にも書きましたが、欧米の雑種例紹介サイトや著作には飼育下での雑種研究成果
に基づいた雑種が掲載されています。なかには、それらの研究によって見出された貴重
な雑種も当然存在しますが、残念なことに、飼育下では雄化が起こりやすいとして慎重
に遺伝子解析するなどして得た証明の伴わないものが少なくありません。 つまり出生
したカモが親ガモと異なる外観だと、飼育下で交雑しえた異なる両親種間の雑種だと
勘違いし、雄化個体を雑種や色素異常個体と取り違えている例が見受けられます。
ともあれ、外国には雑種や色素異常等の変異個体について積極的に議論が交わされ
専門的なサイトも多数存在します。 しかし、ごく限られた人達のみが不思議な外観の
鳥達を正当に評価できるのには、きっと普通な鳥の普通な換羽を知っているかの違いで
なかろうかと思います。
オシドリとマガモの恋仲に関する観察例がネット上にはしばしば見られます。
マガモがアヒルだったりもしますが、実のところこれらの雑種は存在しません。
にも、かかわらず多くの方が雛を期待するのには、また事実と違う感情が作用します。

※ ここまで雄化について触れましたが、先日のオシドリについては継続観察しておられる
方がいて、数年に渡り越夏している個体がストレスによって頭部羽毛が抜けたものだとして
おられる方がいるようですが、私の耳にはなにも届いていません。
断定的な私の記事に対する嫌悪感から真実を告げられないでいるのかも知れませんが、
私自身も鳥全般はおろか生物・自然に対する知識は未熟で、未熟がゆえの誤判断も多数
あるかと思いますから、正当な反論は大歓迎です。とにかく生き物の不思議解明には常に
貪欲でありたいと思いますが、アマチュア特有の手段の貧弱さ、論理の組み立てには不備
も多いと思います。 前記事のオシドリに翼の異常は認められず、他個体が危険に反応し
飛び出すのと全く同一の反応を示し、翼異常の個体にしばしば認められる斜めスライド飛翔
も観察できませんでした。また、外観特徴には雄化を示す季節外換羽兆候や体サイズ等の
違和感があり、現時点では雄化との判断が最も適当かと考えています。
なにしろリトマス試験紙のように、抜けた羽根に検出液をかけたら色が変わり、生物学的な
雌雄が判定できるような便利グッズがあるわけではありませんから、過去に証明された事実
に現在の観察で得られた知識を照らし合わせ観察例を蓄積する以外方法がありません。

変カモ
すべての雄化に対する理解の開始点はこのヒドリガモとの遭遇でした。2008年10月

外国の画像で雄化した個体が雑種として扱われているとしましたが、実はこれらの境界が
外観からは容易に見抜けない、異なる性が同一個体上に再現されている変な個体でなくとも
雄化の疑いがある、殆どオスの外観を持ち、オスの嘴、オスの雨覆なんていうのもいるようで、
モザイク型雄化例ともども原因や外観は単純でない可能性があります。

哺乳類のいわゆる半陰陽と鳥類の雄化が似たようなメカニズムによるものなのか、一部は
同じで、異なるメカニズムが作用しているのか私にはわかりませんが、最初に出合った雄化
ヒドリガモの観察から過大なパーソナル・スペースを必要とし、餌に群がるような競合状態に
感受性の高い個体が、一定期間他のカモと過密な状態で過ごすとストレスから脳下垂体他
が障害を受け、その程度により雄化の進行度が異なると考えるのが合理的なように思います。
人間も同じですが、ストレスの感受性には個人差(個体差)があって、多くの人に適度な刺激
が一部循環器の機能が低下した方などには負担となり、そのような状態が長く続くといわば
自律神経失調症に陥り、重度の場合にはうつや視床下部障害が出るのではないでしょうか。
でも、この辺はずっと推測の域を出ませんが、人工的給餌環境の場所や飼育環境下で雄化
がしばしば見られるのは何か関連性があるように思えてなりません。
外部の認知も雄化も脳がなせる業のような気がしているのが、最近の考えです。

※ 4月9日追記
私の雄化オシドリ記事の写真だけ見て、仙人のような変わった外観のオシドリが雄化だと
判断されても困るので少し追加で書いてみる。

mandarin-f
2012年2月に「鳥と動物園」というタイトルで作成した記事中のオシドリ雄化画像です。

この前の記事とは頭部の雰囲気が随分違って羽毛はあるし、不完全ながら銀杏羽も存在
します。 外観上雑種と雄化と色素異常を確実に見分ける識別点があるんじゃないの?
そう考えている方がいるなら、それは違います。複数の異なる観察時期の羽衣比較から
可能性の高い個体に注目し、鳥体各部の特徴から判断します。 したがって、たった1枚
の画像で雄化が断定できるものと、そうでないものがあります。この辺はどんな鳥の識別
でも言えることですが、私が前回記事のオシドリを雄化と判断したのは次の理由です。

・撮影時期によって安定した繁殖羽の外観・色調に著しい変化が見られたこと。
これに尽きます。もちろん過去に動物園等で雄化他個体の観察経験があるというのも理由
のひとつですが、通例幼鳥を除いたオシドリが1月・3月の間で顕著な換羽もしくは羽衣摩耗
することはありません。ところが、該当個体は色調が淡色となると同時に頭部及び三列風切
が著しい摩耗によって脱落しています。正常な換羽による脱落ではないので、擦り切れたと
言う表現が適当です。 メラニン色素と雄化の間には一定の関連性があり、私はこれまでに
羽毛の白色部の耐摩耗性が他の部分より劣ることをカモの三列風切やカモメの初列風切等
で実際に見てきた経験があるからです。

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オシドリ(カモ)は浮気しなかった

カモがつがい関係を維持するのは産卵・子育ての前まで
・・・そう考えている方は多いのではないだろうか。

特に山岸哲氏が「おしどりは浮気をしないのかー鳥類学への招待」2002 という
中公新書の著書を発表されて以降、顕著となった。
著者の山岸哲氏は内水面のカモ研究で緻密な研究をされた信州大学の羽田健三
門下生にして大阪市立大学教授、京都大学教授をされたのち、民間人初の山階鳥類
研究所所長、現在は名誉所長で兵庫県立コウノトリの郷公園園長や新潟大学特任
教授などをされている名実共に日本の鳥類学分野の権威で関西にも縁の深い方が
多数存在する方です。

山岸氏が明らかにしたのは一般的なつがい関係の維持をある集団について調査し、
その結果ガンやハクチョウに比べて、カモ類は毎年つがい関係を解消して、新たに
つがい相手を獲得する。そういうように理解しているが・・・世間一般にはそうでなく
カモというのは浮気症でその都度雌を追いかけまわしては別の相手とつがいになる
という、ある種侮蔑の意味を含んだ見方をしている方が少なくない。
このような、ある種侮蔑の意味を含んだカモの見方は採餌法にも向けられ、パンに
群がる都市部のカモ達をしばしば自助努力なしに人間の餌に依存しているぐうたら
連中だとして舌打ちしながら観察する方も少なくない。

観察眼というのは人それぞれだし、いろんなものの見方があっていいと思う。
私自身はカモ達の行動をそのような侮蔑的観察眼で見たことはなく、ただ淡々と
現実に目の前で起きる行動や現象が本や報告、論文に記された内容と一致するか
注意深く見続けている。 その結果、つがい関係の維持は私の観察しうるカモ達では
翌年以降も継続している場合が多いということです。
ガンやハクチョウ類ほど家族単位で行動しないカモ類はその採餌物や環境によって
多岐に渡る種が存在し、特に北半球で渡りをするカモ類では雄が子育てに関与しない
つまりはつがい関係の解消が起きますが、これは人間でいう里帰り出産みたいなもの
で離婚ではないように考えています。 カモの社会の繁殖戦略は長年の渡りや対捕食
から巧妙に確立されてきたもので、一生つがい相手を変えないとされるツル達でも相手
が死亡すれば、新たなつがい相手を獲得することがあるように、固定的ではありません。
私はこれまでにも傷ついたオシドリや特徴あるヒドリガモのつがいから多くはありません
が、複数年に渡るつがい関係を多くの種で観察してきました。
全数が翌年も同じつがい相手とペアになるとは言いませんが、身近な観察では意外に
多くのペアが同一相手とつがいになっているのが観察できます。
渡去前のこの時期、お近くの池や川にはペアになったカモ達がいて、彼らは毎年同じ
場所に来ていませんか?そんなカモに心あたりがあったら是非撮影して、翌年の同じ
時期と比較してみて下さい。彼らは同じつがいかそうでないか?少なくとも複数のペアの
そのような観察を経て「カモは浮気症だ・・・」などとのたまわってください。

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ゴルフ場池に毎年渡来する頭部部分白化のヒドリガモ雌成鳥 2014年1月9日

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同じ場所で昨日撮影した頭部部分白化のヒドリガモ雌成鳥 2015年3月6日

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同じ場所で撮影したアメリカヒドリとヒドリガモの雑種雄成鳥 2014年1月9日

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同じ場所で撮影したアメリカヒドリとヒドリガモの雑種雄成鳥 2015年3月6日

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同じ場所で撮影した上記雌雄のペア 2015年3月6日
行動や渡来初期の目撃記録・場所などからこの周辺に毎年渡来しているペアで
行動半径は周囲2~3kmほど 継続してつがい関係を維持していることは特徴の
ある雌雄外観から見て疑いがなく、多くの観察者が撮影記録している。
他の年度の画像もあるが、昨年と今年の画像を並べた。撮影時の天候が異なる
ので、色自体はあまり参考にならない。

前に紹介した雄化の可能性があるカルガモ流星号のつがい相手のオスも昨年と
今年で変化していないのを観察していますし、最古参のヨシガモ雄のつがい相手
の雌もここ数年は同一です。

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出合ったカモたち

昨秋からこの春までカモには多くの出合いがあった。
自家用車の盗難や現在の家庭状況により、すみれや気象光学現象としばらく縁遠く
今期はカモメもワシカモメに南部で遭遇したのみ。昨期に続き、カナダカモメを大阪で
観察するという情熱は持続できなかったら、どうやら大阪を飛び越えて淡路島の大阪側
で観察されたらしいことを最近知って、画像も確認できた・・・残念だ。

秋のシマアジ幼鳥や春の成鳥通過も確認できたが、継続観察の個体から

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今年もプールに渡来したアカハジロ雄成鳥。 大阪市2014年11月19日

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昨年に続いて同じ場所に渡来したアカハジロXホシハジロ雑種雌成鳥。
大阪市2014年11月30日

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アカハジロXホシハジロ雑種雌成鳥の翼パターン

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上の雑種と同じ場所で今年も見られたオナガガモ雄化個体 2014年11月30日

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雄化個体の翼パターン、雌のものに近い

新たに観察できたカモとして

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珍しく大和川河口から5kmほど上流で観察できたカワアイサ 2014年12月2日
その後もやや上流部付近や隣接市等で多数のカワアイサが観察された様子
かつて水質ワースト1の大和川の環境(水質等)がやや改善しつつある?
全国的には珍しくもなく、琵琶湖などでは増加による漁業被害も報告される種で
あるが大阪では淀川の枚方市付近より上流域で毎年見られるのみだったので
今後の動向に注意したい。定期渡来するようになれば、コウライアイサも期待できる。

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コガモ雄化個体 2014年12月25日堺市隣接市

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コガモ雄化個体 2014年12月25日堺市隣接市 雌成鳥(左)と並ぶ

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コガモ雄化個体 2014年12月22日堺市隣接市 成鳥雌雄の間を泳ぐ

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クロガモ幼鳥 大和川河口12月30日
雌ということになっていたが、明らかに幼羽の残る幼鳥なので、確たる根拠がなければ
雌と判断するのは危険

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クロガモ幼鳥 大和川河口12月31日
腹部には明瞭な幼羽が見える

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ビロードキンクロ雌 推定第2回繁殖羽移行中もしくは成鳥 大和川河口12月31日
遠いのでよくわからないが額から嘴のライン、体色の黒さ、頭部の白斑からの判断

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ビロードキンクロ2羽 上記の雌と推定第1回繁殖羽移行中雄 大和川河口12月30日
左側の雌と右側の推定雄第1回繁殖羽では頭部、特に額から嘴にかけてのカーブに
違いが見える。以前、当ブログで解説済み

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ビロードキンクロ2羽 推定第1回繁殖羽移行中雄2羽 大和川河口12月30日
上の画像と違い頭部がくさび状で2羽共に同じ頭部形状

野鳥の会むくどり通信では上記幼鳥が雌と紹介されており、1月号に掲載されたシノリガモ
幼鳥の性別誤認と共に幼羽と判断されたカモの性別判定の態度に疑問を感じる。
1月号のシノリガモ幼鳥画像はモノクロでしかもごく小さな画像ではあるが、目先の黒線が
途切れ、嘴は比較的明色である等の特徴から雄幼羽から第1回繁殖羽に移行するごく初期
10月中旬の画像と判断できる。塩田氏は多くの図鑑にある冬羽画像が幼鳥であると指摘
した過去があり、その姿勢に倣い拙速な判断は避けてほしいものだ。

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アメリカコガモ雄第1回繁殖羽移行中 大阪北部2015年3月8日
初めての観察は2月中旬でその時はまだ三列風切が伸長しはじめたところでした
そのため雑種か否かの断定は難しく、以後計4回観察に行き、3回観察できました
噂が広がった時期に同じ場所にいるコガモ雌がアメリカコガモではないのか?と
いった話題がネットで出ましたが、同齢の亜種コガモで問題ありませんでした。

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翼鏡上縁の赤褐色が明瞭

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メジロガモ雄第1回繁殖羽 2015年3月23日 府内古墳濠
当初、2月に情報を頂いた方のカメラ背面液晶画像では成鳥に見えましたが、嘴爪周辺黒色部
羽衣の状況から第1回繁殖羽と判明。結局迷行してくるカモは大半が幼鳥であるとの説を支持
する結果となった。3月観察の際には餌付いていたのか、人影に寄って来た。

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