をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

似てるぅ! 5

・ 嘴元白斑の出現あるいは顕在化 (成鳥要素)

オシドリ雌成鳥の繁殖羽では、特に老成したものほど顕著な白斑が嘴基部の
目先に存在すると書いた。頭部に出現する模様には、何らかの意味をもつ事が
多く、加齢によって顕在化するもの、逆に消退するものとがあって、雌雄や時期
による換羽影響に左右されることもあれば、斑の出現に優劣関係があって雄の
繁殖羽に構造色をもつ種では斑を被覆して、見えなくなるのが一般的。

スズガモ属のオスは繁殖羽になると黒っぽい頭部で金属光沢のある構造色と
なる場合が多い。嘴の基部に白斑のあるのはスズガモの雌と覚えている方も
多いが、オスの幼羽期にも大抵の種類で存在する。 ところが、オスには上で
書いたように金属光沢のある羽毛が頭部を覆うにつれ、その成鳥の証である
斑が隠されてしまい、代わって金属光沢が出現すると理解したい。そうすれば
ぼんやりした白斑がくっきり顕著な白斑となるスズガモ雌の嘴元斑が成鳥判別
の手段となりうることが、理解頂けるかと思う。

雁類では
Anser albifrons マガン
Anser erythropus カリガネ
Anser cygnoides サカツラガン  など

白鳥類では、白斑に代わって
嘴基部がピンクから黄色になる・・・コハクチョウ・オオハクチョウなど
嘴の色がピンクから橙色になると同時に瘤ができる・・・コブハクチョウなど

ツクシガモ類では
Tadorna tadorna ツクシガモ
Tadorna ferruginea アカツクシガモ
Tadorna cristata カンムリツクシガモ
Tadorna tadornoides クビワアカツクシガモ
Tadorna variegata クロアカツクシガモ
ツクシガモ類の幼羽では嘴基部が白いことが多い。優劣要素によりこの類では
雌性指標として機能している場合が多い。

マガモ属
雄幼鳥が第1回繁殖羽を獲得する際嘴基部が構造色とならず、白っぽいまま
だったり、褐色羽毛のままだったりするのは、この特徴の名残と考えられる。
一方、嘴元の白斑に限らずくっきりした白斑をオス繁殖羽のデザインに取り入れた
種も珍しくない。

Anas platyrhynchos マガモ 頭部全体が構造色に覆われること自体オス。
                      白い首輪もオス要素
Anas querquedura シマアジ 白い眉斑は雌の眼鏡白斑が誇張転意したもの
Anas formosa トモエガモ 巴模様と胸部の境界には首輪がある
Anas falcata ヨシガモ 黒い首輪
Anas acuta オナガガモ 白い頭側線が頸側まで後退した白線
Anas penelope ヒドリガモ クリーム色の額~頭頂斑
Anas americana アメリカヒドリ 白色の額~頭頂斑

ホオジロガモ属
Bucephara clangula ホオジロガモ 頬の白斑
Bucephara albeola ヒメハジロ 耳羽上から後頭部にかけての白斑

シノリガモ属
Histrionicus histrionicus シノリガモ 嘴元白斑

ビロードキンクロ属
Meranitta fusca ビロードキンクロ 目尻の三日月白斑
Meranitta perspicillata アラナミキンクロ 前頭白斑

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似てるぅ! 4

・ 頭・頸部羽毛長 (成鳥要素)

マガモ属のカモも含めて冠羽から後頭部の羽が成鳥で長いというのはよく
見られることだが、求愛や威嚇時の興奮状態でないと、その差が明確で
ないことも多い。

雁類ではオシドリのオス繁殖羽ほどではないが、頸側部の羽毛が顕著に
縦筋(縦斑状)になるのが観察できる。また白鳥類でも、幼鳥と成鳥では
灰色がかった汚白色から白色へと変わるため、気づきにくいが、羽毛の
質感がささくれた幼鳥の短い羽毛から、長く滑らかな成鳥の白色羽に変化
するのが見られる。気づき易い種と、そうでない種がいるが、カモ目の鳥に
かなり共通した、幼鳥と成鳥の外観差ということができると思う。

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似てるぅ! 3

本日取り上げるのは成鳥要素3点から、雁類とも共通点が多い

・嘴爪の色が黒っぽい色から白色へ (成鳥要素)

そもそも嘴の色はオスもメスも年中変化しないと考えている方が結構多い。
ややこしい要素が少しでも減るように、ヒドリガモなら先端が黒い灰色だと
覚えて、微妙な変化を見ようとしない。
カモの観察をしていると、幼若要素、時期要素、雌雄要素を無視して外観
判断することはまずできない。これはスズメ目の鳥などでも共通する内容で
シメの嘴の色が夏と冬で異なることを知る方も多いかと思う。 単に嘴の色
変化だけではなく、嘴爪の色がそれ以外の部分と異なる種では、嘴爪の
色変化によって成・幼の判断が可能なものもいる。

オシドリのように成鳥オスの繁殖羽ピーク時に極めて赤くなる種はそれほど
多くないようだが、ピンク色や橙色も含めるとかなりの鳥が該当してくる。
そのうち、嘴爪の色が黒~白に変化するのは大体以下の種。
雁類
Anser albifrons マガン
Anser erythropus カリガネ
Anser anser ハイイロガン
Anser caerulescens ハクガン
Anser rossi ロスガン?
Anser canagicus ミカドガン
白鳥類
Cygnus atratus コクチョウ
Cygnus meranocoryphus クロエリハクチョウ
ツクシガモ類
Tadorna cristata カンムリツクシガモ 推定
アカハシハジロ属
Netta rufina アカハシハジロ
シノリガモ属
Histrionicus histrionicus シノリガモ
ケワタガモ属
Somateria mollissima ホンケワタガモ
Somateria spectabilisケワタガモ

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似てるぅ! 2

より明瞭な淡色羽縁 (雌性指標)

今回は羽根がもつ淡色羽縁、spotやfringeと呼ばれる淡色羽縁が決め手です。
従来より私はこの羽根のもつ淡色羽縁がマガモ属のカモの雌雄判定では重要だと
カルガモの観察例から指摘しました。
カルガモの羽色で雌雄を判別するのに適しているのは1月~5月頃。特に2月~
4月の成鳥ではペアとなっているものも多いことから、黒っぽくて少し大きめの方
をオスと判断すれば、他のマガモ属のカモ同様、素人レベルでも判断できます。
過去に紹介した山階鳥研報 21: 247-252,1989 「羽色に基づく繁殖期のカルガモの
雌雄判別」 今村知子・杉森文夫 では、繁殖期の羽色を問題としているので、実際
には冬季の判別しやすい時期の外観とは少し違っていて、冬季にはさほど問題とは
ならないsubmarginal marksに言及することとなっていますが、それが時期的変化に
由来するのか、雑種に由来するのかの結論が出せずにいます。 過去の一部の雑誌
記事や自身の観察例から、私はこのsubmarginal marksをメス繁殖羽特有の変化と
結論づけています。

zono-mjuv
juvenile male  Anas zonorhyncha about 2 months after hatched
カルガモオス幼鳥 生後約2ヶ月 近所の公園 

zono-madt
adult male  Anas zonorhyncha
カルガモ オス成鳥

zono-fjuv
juvenile female  Anas zonorhyncha about 2 months after hatched, sister of
upper juvenile males
カルガモメス幼鳥 生後約2ヶ月 近所の公園 

zono-fadt
adult female  Anas zonorhyncha , mother of upper juveniles
カルガモ メス成鳥 上の画像幼鳥3羽の母鳥

以上の画像からも、幼鳥においても論文報告にある尾筒の羽色による雌雄判別は
可能であるが、三列風切羽縁、肩羽羽縁、脇羽形状からも推定可能であるし、前
記事で取り上げた過眼線とその周囲要素から判別できる。特に上・下尾筒の羽縁
淡色部の有無から雌雄を判断できるようになるのは、生後1ヶ月ほど経過してから。
過眼線要素から判断すれば、確実性はどれほどか不明ながら数日で判断できる?
と予想している。

オシドリメスの脇羽に見える水玉白色模様も羽縁淡色部が明瞭となったもので、
カルガモの雌雄判断がしやすい2月~4月のより成熟したした個体に明瞭に出現
する斑だと言える。 このような例は他にも多くあるし、カモや水鳥に限定しないと
推測するが、実際羽根の一枚、一枚を観察・撮影するのはアマチュアにとっては
ハードルが高いので、実際の画像はない。

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似てるぅ! 1

デンドロネッサの記事で紹介した、いくつかの識別点。
これらの識別点がオシドリに独特なものか、他のカモや鳥類にも見られるものか?
そういった意味で接近観察の難しいオシドリの画像と共に心当たりのある雁類の
図鑑画像や写真を見ていると、雁類とオシドリの間にはいくつもの共通点が存在
することに気付いた。 つまりは水面採餌ガモに分類され、フィールドガイド日本の
野鳥ではマガモ属にまぎれて掲載されているオシドリは、形態その他の特徴から
小形の雁類に、マガモ属のカモ達は頸が短い小形の白鳥類に見えてくる。
生物進化学上、どのような進化を経て現行カモ類が存在するのか、良く知らないし
アイサの仲間とウの仲間、一部のミズナギドリが良く似た鉤型の嘴をもつことなど、
形態の類似は必ずしも近縁種を意味しないが、以下の斑紋特徴や裸出部の特徴
からは、そのもつ意味に共通性が見える。

羽がもつ模様や裸出部の形状、色の意味が分かれば、分類学的に見ても生物
進化を理解する上でもきっと有用であるはず。 ここではカモに見られる斑紋の
共通性とその意味について近縁種・白鳥、雁、鴨・水鳥にまで対象を広げて観察
アプローチしてみようと思う。また従来このようなアプローチで研究しておられた方
が存在するなら、是非ともその内容に触れてみたい。

模様が意味をもった形として認識される時
失われた文字を解読したり、暗号を解読したような感覚にとらわれると同時に
今まで見ていた世界が別の世界に変わって見える。文字や言語同様それらは
転意したり転訛したりして変容もする。そこがまた面白い。
一度に記事にすると、とても長くなるので、分割して書こうと思う。予告より項目が
増える可能性があります。

・アイパッチ    (雌性指標)
glass-patch
オシドリは眼鏡形状(片側レンズフレームとつる)の白色アイパッチをもつことは
前々回記事に書いた。眼周囲の斑と目のつくり出す形はメスを意味する指標です。
また、この眼鏡斑は通常単独でもメスを意味することが多いのですが、オシドリの
ように雌雄で同大の斑紋をもつ際には、輪郭不明瞭な方が、異なる大きさの相似形
をもつ際には小さい方がメスを意味します。つまり強調された眼鏡斑はオスを意味し
反対の意味をもつようになります。オシドリの繁殖羽では丸囲い数字1が12へ変化
オスはより広範囲な相似形2へと変化します。

12タイプの斑をもつメスには
同属の Aix sponsa アメリカオシ
白鳥類 Cygnus melanocoryphus クロエリハクチョウ
ツクシガモ類 Tadorna ferruginea アカツクシガモ
Tadorna cana ネズミガシラツクシガモ
Tadorna tadorinoides クビワアカツクシガモ
Tadorna variegata クロアカツクシガモ
Tadorna cristata カンムリツクシガモ
フナガモ類 genus Tachyeres フナガモ属
マガモ属 Anas laysanensis レイサンマガモ
Anas gibberifrons albogularis インドネシアコガモ亜種
マガモ属部分白化 some partial leusism of genus Anas
クビワコガモ属 Callonetta leucophrys クビワコガモ
アカハシハジロ属 Netta erythrophthalma ネッタイハジロ
Netta peposaca ベニバシガモ
スズガモ属 Aythya collaris クビワキンクロ
ケワタガモ属 Somateria spectabilis ケワタガモ
Polysticta steelleri コケワタガモ
コオリガモ属Clangula hyemalis コオリガモ
ウミスズメ科 Cepphus carbo ケイマフリ
タマシギ科 Rostratula benghalensis タマシギ

ここでは以上のようなメガネ形アイパッチを便宜上基本形とした。
理由は属、科を越えて共通斑が多く見られること、スズメ目のガビチョウも
同様斑をもつが、陸鳥であることと、その意味が明確ではないので挙げなかった。
キジやニワトリの仲間も裸出部他が同様の意味を持っているようだし、過眼線に
絞って考えても黒くくっきりした過眼線がオスを意味するチドリの仲間、モズの仲間
にも、見出すことができる。

3は陰陽反転形となるが意味は同じ
リュウキュウガモ属 Dendrocygna guttata シラボシリュウキュウガモ
エジプトガン属 Alopochen aegyptiacus エジプトガン
?属 Lophpnetta specularioides

4は陰陽反転形を前後に拡張した過眼線タイプ
マガモ属の多く many species of genus Anas
マメガン属 genus Nettapus
オタテガモ属  genus Oxyura

5は4の亜形、過眼線上下が白く抜ける
タテガミガン属 Chenonetta jubata タテガミガン

6は4の亜形、過眼線が目先に延長したタイプ
ウミアイサ属 genus Mergus

7は1の原形 白いアイリング状
?ガン属 Chloephaga hybrida ?ガン
マガモ属部分白化 some partial leusism of genus Anas

8は1が目先と頬で分離したもの
ビロードキンクロ属 Melanitta perspicilata アラナミキンクロ
            Melanitta fusca ビロードキンクロ
嘴元斑、頬斑、目先斑、耳羽上斑、額斑は類似の意味をもつがここでは
取り上げず、次回の嘴元斑で取り上げる。

9は過眼線より顔の上半分が濃色トーンとなったもの、2の反転形
雁類 Anser cygnoides サカツラガン
コクガン属 Branta hutchinsii シジュウカラガン を含む
Branta complex
ツクシガモ類 Tadorna cristata カンムリツクシガモ
9の要素と2の要素を同時に併せ持つ
オシドリ属 Aix sponsa アメリカオシ
マガモ属 Anas americana アメリカヒドリ
Anas sibilatrix ワキアカヒドリ
Anas falcata ヨシガモ
Anas strepera オカヨシガモ
Anas formosa トモエガモ
Anas wyvilliana ハワイマガモ
Anas crecca コガモ
Anas querquedula  シマアジ
Anas acuta オナガガモ
Anas versicolor ギンイロシマアジ
Anas hottentota ホッテントットコガモ?
?属 Malachorhynchus membranaceus ?
サザナミガモ属 Salvadorina waigiuensis サザナミガモ
アカハシハジロ属 Netta rufina アカハシハジロ
ケワタガモ属 genus Somateria
クロガモ属 Meranitta americana クロガモ
オタテガモ属 Oxyura jamaicensis アカオタテガモ
このパターンの多くはオスである。矛盾ではないかと思うだろうが、複数の要素が
混在する(例えば構造色の羽衣や有色の嘴)場合には第2義となる。 また一部
カモ特にオカヨシガモでは成鳥オス繁殖羽の一部に少し認められるものや、変化
した形として嵌入した白色が頸部まで後退したオナガガモがいる。

10は拡張した12であり、周囲の暗色部がなくなるとオスを意味する
ツクシガモ類 Tadorna ferruginea アカツクシガモ
Tadorna cana ?ツクシガモ
コオリガモ属Clangula hyemalis コオリガモ

11は7の明暗反転拡張形
これも嘴元斑の回に取り上げた方がいいかも知れないが眼の周囲のサインと
いう意味でここに挙げる
ミコアイサ属 Mergellus albellus ミコアイサ
雌雄共に眼の周囲に黒斑が明瞭となるが、幼鳥時に目立たず、エクリプスに
おいても不明瞭な点から、ここに挙げた。

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