鳥見で利用する識別点や情報、確認しながら使ってますか?
【中部地方で出ているオオヨシゴイは雌幼鳥】
サギ類の換羽様式はよく知りません。なので以前ミゾゴイの幼鳥を成鳥だと紹介
したことがありました。
ですから、今回も私の考えが絶対に正しいと断定的に主張するのではなく、
幼羽の状態や短頸サギ類の外観特徴を総合的に考えて、雌成鳥と記載するのは
少し考えたほうがいいように思います。
短頸サギ類にはゴイサギ幼鳥がホシゴイとも呼ばれるように白斑=ホシが幼鳥時
に見られるのが普通だと考えます。年2回換羽か否かを議論せずとも幼羽・成鳥羽
は明らかな外観上差異がありカモやシギの幼羽判断と同様の理屈が適用できる
はずです。ヨシゴイの仲間及び近縁種は性的二形が明瞭なものが多くオオヨシゴイ
も雨覆がほぼ無斑で淡色なものがオス、白斑が明瞭な模様ありがメスと判断できる。
一般的に幼鳥の外観はメス成鳥に似るので、オス幼鳥とメス幼鳥もメス成鳥と誤認
される可能性が残る。しかし、上述のようにオス幼鳥では早期に雨覆がほぼ無斑と
なるため識別可能であるし、成鳥と幼鳥では頸側から胸腹部サイドに及ぶ縦線が
幼羽によって分断されて見えるので線状でなくやや点線状に見える幼鳥に対して
成鳥の縦線はかなりなめらかにつながって見える。 また、成鳥、幼鳥では出現する
白斑の辺縁形状がいびつで大きい傾向のある幼鳥、丸斑でほぼ均一な白斑が存在
するのが成鳥と言える。今回のように長期滞在した場合背の白斑が無斑へと変化
し赤褐色のべたっとした感じになっていけばオス幼鳥(2014年秋の兵庫県個体は
外観よりオス幼鳥、その後落鳥が確認された)で、雨覆の白斑が明瞭なままの個体
ならメス幼鳥と判断してもよいと考える。
日本の鳥550に掲載されている大阪府記録のオオヨシゴイもメス幼鳥、外国の野鳥
サイトにもメス幼鳥がメスとして掲載されているものが結構あった。OBIにNo.9掲載の
メス成鳥は正しくメス成鳥でNo.10以降しばらくメス表記のメス幼鳥が続く。
頸側の幼羽がまるでカモ幼羽の最上段脇羽に見えるのがわかれば識別できるはず。
【識別ポイントにも注意点がある】
芦ヶ池 10月25日 ヒドリガモオス幼羽
オスの成幼は雨覆を見て白ければ成鳥、淡褐色や網目模様なら幼鳥
これはよく知られた識別点。しかしこの幼鳥、幼羽が目立つのに雨覆は
かなり白い。多くはないもののこういう個体もいるので一点のみの識別
が全てだと誤解しないようにしたい。
これより芦ヶ池撮影の本日画像
ハシビロガモオス幼羽
ヒドリガモオス幼羽
ヨシガモオス幼羽
ヨシガモエクリプスより繁殖羽移行中の若いオス成鳥
ヨシガモエクリプスより繁殖羽移行中のオス成鳥
最上段脇羽が尖っていたら、肩羽に尖りがあれば幼羽と判断できるが
当然2年目などの若い成鳥も脇羽は尖り気味なので、尖り具合を知る必要がある
やはり脇羽の幼羽形状はサギ幼羽の頸側幼羽によく似る。
【マガモにまつわる常識と非常識】
鳥見を始めた頃は、図鑑の著者、研究者、標識調査員、動物園飼育員、野鳥の会幹部の
方たちはさぞかし野鳥に対する知識に精通しているものと考えていた。 実際には人それ
ぞれでいろんな方がいるというのが現在の認識。
嘴がオスタイプの雄化マガモを複数観察
10月24日 京都市上京区 雄化マガモA 対岸近くにいたものを撮影したので画像が甘い
脇には細い横斑が認められ、撮影時は雑種かも?と考えたA個体。 京都の様子を
普段から聞いているB君が言うI氏のマガモの可能性が高い
10月24日 京都市北区 雄化マガモB
脇に細い横斑が認められ、時間差と足の不具合から別個体と判断できるB個体
これまで観察してきた雄化マガモは嘴がメスタイプであったので、複数のオス型嘴
をもった個体が観察できたのは驚き。このカモが雑種でなく雄化であると結論でき
たのはB君の記録画像によるところが大きい。
※ 上記雄化マガモの判定にはやや疑問があることが判明しました。
どうやらI氏のマガモと私の観察した個体は異なるらしい。そのため、異なる時期の
画像による比較によって判定される高度雄化の確証が得られませんでしたので、
継続観察の必要ありです。 12月4日追記。
京都市動物園の飼育員ブログ2017年02月11日 (土) のエントリーに
「ハイブリッドなカモたち」と題する記事が掲載されているが、下の画像は記事中
小さいと記録されており、メスタイプの嘴をもつマガモオスであることから、雄化と
判断できる個体。 動物園の飼育員さんの間では雄化ガモに対する認識が薄い
ことが、カモ識別図鑑が存在する現在指摘せざるを得ない。
ほかにはアヒルの尾羽がカールしているか否かで雌雄が判断できると情報発信
している別の動物園もあるが、カールしている時期が限定されることが付記されて
おらず、場合によっては混乱を招く。
せっかくの識別点に関する知識もフィールドでの検証作業を欠いたものならば
適用に問題が生ずることをぜひ心得ていただきたい。
【アカハシハジロの幼鳥の性別判断】
ひと月ほど前だったか、東京ズーネットのツイッターで配信された画像に違和感を
感じた。多摩動物公園の野生生物保全センターではDNAを調べることで早期に
幼鳥の雌雄を判別し、その後の飼育に役立てようというものです。 目的や取り組み
には賛成ですが、6月生まれの幼鳥の雌雄が判別できないというスタンスで添付
されている画像には疑問を感じます。この画像が幼綿羽時期の画像ならどなたも
雌雄判別できない画像ですが、添付画像奥の一段高い場所にいるのは間違いなく
オス幼鳥です。写真には(オス2羽、メス2羽)のコメントが添えられどの個体が雌雄
かという点には触れられておらず、角度の関係でもう一羽のオスを指摘するのは
困難ですが、奥の個体の虹彩色、嘴の配色、胸の黒味は雄であることを示している
のです。この画像が配信されたのは10月13日ですが、遡ること9月2日の公式
ツイッターには同じ4羽が掲載されていて右の2羽がオスであることがわかります。
この夏に淀川で観察したマガモ雄幼鳥は7月末で既に雄繁殖羽を窺わせる羽衣が
頭部から胸部にかけて出現していました。個体差は大きいですが多くの鳥類では
幼羽から第1回冬羽に移行する時期に性徴が現れることが稀ではありません。
このところキビタキの雌外観をした鳥に見られる白斑で一部の方が盛り上がって
いるようですが、私が過去に観察したキビタキ幼鳥には秋、春にかかわらず白斑の
見られるものが少数いました。環境省が作成したバンディングに基づく資料から
オスだけでなく一部のメスにも白色部をもつキビタキのいることが紹介されていますし
個体差や換羽進行度から考えて、それらの大半は雄若鳥であろうことが推測され、
換羽進行の遅い個体や白色部出現が遅い個体では翌年春頃になってようやく白斑
出現に至るだろうと判断します。この資料にもあるように、第1回冬羽でも雨覆が黒く
白斑が出現するものもいれば、そうでないものもいるということだろうと思います。
ともあれ、何かに着目してそこから何かを導き出そうとする姿勢は重要なので、視野
を広げるという面ではこだわる価値のあることです。 この部分のみ11/8追記。
【中部地方で出ているオオヨシゴイは雌幼鳥】
サギ類の換羽様式はよく知りません。なので以前ミゾゴイの幼鳥を成鳥だと紹介
したことがありました。
ですから、今回も私の考えが絶対に正しいと断定的に主張するのではなく、
幼羽の状態や短頸サギ類の外観特徴を総合的に考えて、雌成鳥と記載するのは
少し考えたほうがいいように思います。
短頸サギ類にはゴイサギ幼鳥がホシゴイとも呼ばれるように白斑=ホシが幼鳥時
に見られるのが普通だと考えます。年2回換羽か否かを議論せずとも幼羽・成鳥羽
は明らかな外観上差異がありカモやシギの幼羽判断と同様の理屈が適用できる
はずです。ヨシゴイの仲間及び近縁種は性的二形が明瞭なものが多くオオヨシゴイ
も雨覆がほぼ無斑で淡色なものがオス、白斑が明瞭な模様ありがメスと判断できる。
一般的に幼鳥の外観はメス成鳥に似るので、オス幼鳥とメス幼鳥もメス成鳥と誤認
される可能性が残る。しかし、上述のようにオス幼鳥では早期に雨覆がほぼ無斑と
なるため識別可能であるし、成鳥と幼鳥では頸側から胸腹部サイドに及ぶ縦線が
幼羽によって分断されて見えるので線状でなくやや点線状に見える幼鳥に対して
成鳥の縦線はかなりなめらかにつながって見える。 また、成鳥、幼鳥では出現する
白斑の辺縁形状がいびつで大きい傾向のある幼鳥、丸斑でほぼ均一な白斑が存在
するのが成鳥と言える。今回のように長期滞在した場合背の白斑が無斑へと変化
し赤褐色のべたっとした感じになっていけばオス幼鳥(2014年秋の兵庫県個体は
外観よりオス幼鳥、その後落鳥が確認された)で、雨覆の白斑が明瞭なままの個体
ならメス幼鳥と判断してもよいと考える。
日本の鳥550に掲載されている大阪府記録のオオヨシゴイもメス幼鳥、外国の野鳥
サイトにもメス幼鳥がメスとして掲載されているものが結構あった。OBIにNo.9掲載の
メス成鳥は正しくメス成鳥でNo.10以降しばらくメス表記のメス幼鳥が続く。
頸側の幼羽がまるでカモ幼羽の最上段脇羽に見えるのがわかれば識別できるはず。
【識別ポイントにも注意点がある】
芦ヶ池 10月25日 ヒドリガモオス幼羽
オスの成幼は雨覆を見て白ければ成鳥、淡褐色や網目模様なら幼鳥
これはよく知られた識別点。しかしこの幼鳥、幼羽が目立つのに雨覆は
かなり白い。多くはないもののこういう個体もいるので一点のみの識別
が全てだと誤解しないようにしたい。
これより芦ヶ池撮影の本日画像
ハシビロガモオス幼羽
ヒドリガモオス幼羽
ヨシガモオス幼羽
ヨシガモエクリプスより繁殖羽移行中の若いオス成鳥
ヨシガモエクリプスより繁殖羽移行中のオス成鳥
最上段脇羽が尖っていたら、肩羽に尖りがあれば幼羽と判断できるが
当然2年目などの若い成鳥も脇羽は尖り気味なので、尖り具合を知る必要がある
やはり脇羽の幼羽形状はサギ幼羽の頸側幼羽によく似る。
【マガモにまつわる常識と非常識】
鳥見を始めた頃は、図鑑の著者、研究者、標識調査員、動物園飼育員、野鳥の会幹部の
方たちはさぞかし野鳥に対する知識に精通しているものと考えていた。 実際には人それ
ぞれでいろんな方がいるというのが現在の認識。
嘴がオスタイプの雄化マガモを複数観察
10月24日 京都市上京区 雄化マガモA 対岸近くにいたものを撮影したので画像が甘い
脇には細い横斑が認められ、撮影時は雑種かも?と考えたA個体。 京都の様子を
普段から聞いているB君が言うI氏のマガモの可能性が高い
10月24日 京都市北区 雄化マガモB
脇に細い横斑が認められ、時間差と足の不具合から別個体と判断できるB個体
これまで観察してきた雄化マガモは嘴がメスタイプであったので、複数のオス型嘴
をもった個体が観察できたのは驚き。このカモが雑種でなく雄化であると結論でき
たのはB君の記録画像によるところが大きい。
※ 上記雄化マガモの判定にはやや疑問があることが判明しました。
どうやらI氏のマガモと私の観察した個体は異なるらしい。そのため、異なる時期の
画像による比較によって判定される高度雄化の確証が得られませんでしたので、
継続観察の必要ありです。 12月4日追記。
京都市動物園の飼育員ブログ2017年02月11日 (土) のエントリーに
「ハイブリッドなカモたち」と題する記事が掲載されているが、下の画像は記事中
小さいと記録されており、メスタイプの嘴をもつマガモオスであることから、雄化と
判断できる個体。 動物園の飼育員さんの間では雄化ガモに対する認識が薄い
ことが、カモ識別図鑑が存在する現在指摘せざるを得ない。
ほかにはアヒルの尾羽がカールしているか否かで雌雄が判断できると情報発信
している別の動物園もあるが、カールしている時期が限定されることが付記されて
おらず、場合によっては混乱を招く。
せっかくの識別点に関する知識もフィールドでの検証作業を欠いたものならば
適用に問題が生ずることをぜひ心得ていただきたい。
【アカハシハジロの幼鳥の性別判断】
ひと月ほど前だったか、東京ズーネットのツイッターで配信された画像に違和感を
感じた。多摩動物公園の野生生物保全センターではDNAを調べることで早期に
幼鳥の雌雄を判別し、その後の飼育に役立てようというものです。 目的や取り組み
には賛成ですが、6月生まれの幼鳥の雌雄が判別できないというスタンスで添付
されている画像には疑問を感じます。この画像が幼綿羽時期の画像ならどなたも
雌雄判別できない画像ですが、添付画像奥の一段高い場所にいるのは間違いなく
オス幼鳥です。写真には(オス2羽、メス2羽)のコメントが添えられどの個体が雌雄
かという点には触れられておらず、角度の関係でもう一羽のオスを指摘するのは
困難ですが、奥の個体の虹彩色、嘴の配色、胸の黒味は雄であることを示している
のです。この画像が配信されたのは10月13日ですが、遡ること9月2日の公式
ツイッターには同じ4羽が掲載されていて右の2羽がオスであることがわかります。
この夏に淀川で観察したマガモ雄幼鳥は7月末で既に雄繁殖羽を窺わせる羽衣が
頭部から胸部にかけて出現していました。個体差は大きいですが多くの鳥類では
幼羽から第1回冬羽に移行する時期に性徴が現れることが稀ではありません。
このところキビタキの雌外観をした鳥に見られる白斑で一部の方が盛り上がって
いるようですが、私が過去に観察したキビタキ幼鳥には秋、春にかかわらず白斑の
見られるものが少数いました。環境省が作成したバンディングに基づく資料から
オスだけでなく一部のメスにも白色部をもつキビタキのいることが紹介されていますし
個体差や換羽進行度から考えて、それらの大半は雄若鳥であろうことが推測され、
換羽進行の遅い個体や白色部出現が遅い個体では翌年春頃になってようやく白斑
出現に至るだろうと判断します。この資料にもあるように、第1回冬羽でも雨覆が黒く
白斑が出現するものもいれば、そうでないものもいるということだろうと思います。
ともあれ、何かに着目してそこから何かを導き出そうとする姿勢は重要なので、視野
を広げるという面ではこだわる価値のあることです。 この部分のみ11/8追記。
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