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をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

Rホシメジロ雄成鳥

先日の兵庫県撮影のカモ雑種記事の最後に紹介したもう一方の雑種カモ。
今回はその雑種カモの詳報です。

なお、私は両親種の推定時点で父カモがどちらであるかを表現するために
タイトルにあるような表記法をとっており、R=リバースの意味から裏を頭に
冠したウラホシメジロとしております。ホシメジロはメジホシやメジロホシ等
より語呂がいいのでメジロガモ及びホシハジロの関わった雑種は全てホシ
メジロと呼び、その並び通りホシハジロ雄×メジロガモ雌の雑種ならばホシ
メジロと表記、両親種の性が逆転していればRホシメジロとしています。
あくまでも私自身が雑種を呼び分ける際の呼称です。     世の中では
カルガモとマガモをマルガモと呼んでいますが、これらの雑種は大半が家禽
マガモとカルガモの雑種なので、そんな呼び方は好きではありません。
なお、上にある呼称はどちらかというとカモ識別図鑑でいうところのメジロガモ
寄り、ホシハジロ寄りという区分に同義とも判断できますが、著者とこの件に
ついてお話したことがありませんので、不明です。

ferruginous-hybrid
メジロガモ雄×ホシハジロ雌 雑種雄成鳥 1月19日 兵庫県
Ferruginous Duck male × Common Pochard female     hybrid adult male

もう何年も前から新潟県瓢湖に渡来している典型的メジロガモ雑種の雌雄と
同じ組み合わせ。瓢湖の雑種はしばしば雌雄で観察されているようなので、
同時期に孵化した兄妹ガモの可能性もある。

left-side
頭部周辺は父カモの影響が如実に現れる部分と理解しているので、メジロガモ
譲りの頭頂の尖った形状が印象的。しかし、ホシハジロの影響により尖り具合が
幾分マイルドになっている。嘴の配色はホシハジロの影響が強いが基部の厚みが
低く華奢なメジロガモの影響も見える。

front
胸の色はホシハジロの黒とは異なり赤みの強い褐色。嘴は先端黒色部が控えめな
ホシハジロパターン。

rear
後ろから見ると見慣れていない方からはホシハジロ雄との見分けがつきにくい
ようだが背の色はずっと暗色で黒っぽい。

jaw-stretch
あご伸び。 翼をもう少し上げればエンジェルポーズとも呼ばれている。
頭部は金属光沢があり、容易に構造色であると理解できる。
雑誌Birder1月号に構造色の解説があって、羽根の表面構造のみで
構造色が出現すると誤解される解説がなされているが、白色の構造色
以外の構造色はメラニン色素の共存下で発現するものなので、表現に
疑問を感じた。

struggle-with-pochard
ホシハジロ雄を負かすメジロガモ雑種
ホシハジロより体格が小ぶりながら気は強くホシハジロの背後を取って
ホシハジロを蹴散らした。 ※ 交尾ではありません。

pochard-struggle
こちらはホシハジロ雄同士の争い。後頸に噛みつくと勝敗がつくので激しく
背後の取り合いが続きます。このような態勢から見えてくるのは交尾姿勢
は究極の服従が具現化・様式化されたもののようにも見えます。

nyroca-hybrid-display
潜水採餌ガモでよく見られるヘッドスローディスプレイ。ホオジロガモのそれも
同じに見えますが、頭部を背に乗せている時間が長く写真撮影が容易です。
私は所有のカメラの連射機能が故障していたので2年ほどこのヘッドスロー
が撮影できず、メジロガモ成鳥他多くのヘッドスローを撮り損ねました。
アイサ類では頭部はここまで後方へ折り曲げず、逆への字状になり嘴を前方
へと突き出して開きます。マガモ属が主体の水面採餌ガモはヘッドスローは
せず、種特有の儀式から水はね鳴きや反り縮みを繰り返し、後頭差し向けや
けしかけを経て交尾に至りますが、交尾時の姿勢はカモ亜科に共通したもの
です。
 メジロガモといえば雑誌Birder2月号のNerd Birdsでメジロガモ成鳥と家禽
マガモ雌の異属間交尾の模様が取り上げられていましたが、Birder誌の前身
日本の生物時代に掲載された巨大メジロガモの写真も版権をクリアできる筈
でぜひともその辺りへの言及が欲しかった。

feeding-clam
雑種の見られた河川は都市河川によくあるコンクリート三面張りの汽水河川で
そのような環境に足糸で固着したコウロエンカワヒバリガイがよく観察できる。
雑種2種はこれらの貝(ヤマトシジミを含んでいる可能性あり)をよく潜水採餌
していた。周辺にはボラも多数見られた。また表層を泳ぐこれら魚類を狙って
時折ミサゴがダイブした。

feeding-weeds
大阪城や淀川、大和川でも普通によく見られるオオカナダモも潜水採餌した。

stretch
上にあげたように全体的にはメジロガモの影響が強く見えるこの雑種では
あるが、胸中央から腹部境界付近には黒色部分が認められ、ホシハジロの
影響もしっかり見てとれる。

wingflap
翼帯はメジロガモのオス成鳥で極めて白く初列風切外側まで及ぶがホシハジロの
灰色翼帯が合成され暗色枠付きのやや褐色味のある灰色翼帯となっている。

nyroca-ferina-iris
雑種の虹彩。瞳孔を取り囲む部分が白っぽく、外周が赤っぽい橙色。
これが遠目に見て黄色に見える原因。いわゆる並置混色。
なお両親種が逆転した場合に中心部と外周部で色彩が反転するか
否かについてはサンプルが少なくて不明。
私は色彩的要素については主たる識別ポイントとは見なしていない。
見え方や写真の露出度合いの影響を受けやすいためではあるが、
虹彩色に関しては、雌雄(雄化含む)、成幼、雑種に重要な情報を
もたらすために極めて高いウェイトを置いている。

spotbill-mandf
このカルガモの虹彩色を黒田長禮博士は著書「雁と鴨」の中で
オスはDresden Brown ドレスデンブラウン、メスはCinnamon
Brown シナモンブラウンと表現している。
この画像は昨年2017年6月9日撮影なので繁殖期に相当する。
ここで注意してもらいたいのは繁殖と繁殖であり、
嘴や虹彩はむしろ羽でなく期に依存して変化する。
カルガモの虹彩色の違いはマガモのそれと同一で、カモ識別図鑑に
言及はないが、しっかり区別して描かれている。同じことが、ヨシガモ
後列肩羽やマガモ雌外側尾羽などでもあって、大西氏が講座中で
触れたように既に知っている人にとっては既知の事実であっても、
知らない人にとってはへぇ!の話である。 また、後列肩羽のことを
副肩羽と呼ぶとも話されていた。 なお虹彩色の雌雄差は繁殖期に
顕著ですが、ほぼ一年中見られることもあります。

SEX-DEFINITION
上にあげたように
 1、虹彩色の違い
 2、嘴先端黄色部分が夏場は橙色味が強くなり、メスでは黒色部との境界が
ぼやけて滲む、黄色部が白っぽい橙色から肉色に変化。先端部以外の黒色部
も部分的に地色の淡色味が露出する傾向。
 3.メスには三列風切に特徴的な斑が出現
 4、メスの尾筒が黒くなく、羽縁に淡色部がある

以上のような理由で今村・杉森が1989年に報告した山階鳥研報 Vol.21 (1989) No.2
「羽色に基づく繁殖期のカルガモの雌雄判別」は先輩学芸員に配慮した結果か、三列
風切に見られる著変を見逃しており、後のカルガモ雌雄判別に与えた不確定感は看過
できないレベルにある。
このようなカルガモの雌雄は判断が難しいという印象が強いのか、野鳥の会大阪支部
「むくどり通信」1月号の表紙ページにはオスの頭部画像が4列5段20種並ぶ中、唯一
カルガモだけは夏のメス画像が掲載されており、本文中の雌雄画像も光線状態が違う
同一個体の時間差画像が採用されている。かつて、雑誌Birder2007年11月号にて
カモ特集が組まれた時にも雌雄で同じ画像が掲載されていると指摘しただけに、私に
とっては大変なショックでした。
※ むくどり通信3月号にはこのカルガモ雌雄画像についての修正記事及びヒドリガモ
等の翼鏡に関する説明・検証記事が15ページ一面を割いて掲載されました。この様な
訂正記事が詳細にわたって掲載されることはあまり経験がなく、野鳥の会とりわけN氏
の真摯な態度に感心しました。兵庫に出たヒメハジロ雌訂正雄幼鳥以来の出来事です。
3月12日追記



※ 昨日休日出勤から戻って、正月休みに出入りしていた野鳥図鑑サイトで質問が
あがっていた潜水採餌ガモの雑種を見てびっくり! 大阪での撮影とあるので翌日
探査に出かけるべくワクワクしていたら・・・なーんや、5年前の画像やん。
でも5年前の3月に淀川にクビワキンクロ×スズガモ(推定)雌が出ていたなんて。。。

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intersex Pochards

intersex-pochard-A
2月12日画像取り違えに気づき差し替え 元画像は2月12日の記事に掲載
既に報告済みのホシハジロ雄化A 2月12日 北外濠

intersex-pochard2
同じ濠で見つけたホシハジロ雄化B 大阪市 1月16日
1月20日開催の第15回鳥類学講座 「カモの識別講座 - 大西敏一氏」実習時の個体

intersex-hybrid
既報のホシハジロ×キンクロハジロはどういうわけか雄化と並んでいることが多い

intersex-pochard3
最近はお城のカモ観察時にセットで観察している大川・八軒家浜対岸で見つけた
ホシハジロ雄化C 大阪市 1月16日
ホシハジロ雄化に共通しているのは  1.背と脇がともに灰白色でむらの無い羽衣
                        2.耳羽から頬にかけて淡色部あり
                        3.虹彩は暗い赤色
                        4.胸は程度に差はあるが黒色化の傾向 など

この画像の右側がぼんやり暗いのは現地が2重柵で接近できず、柵が写りこんでいる


以下に挙げるのは PLUS HYBRID つまり雑種に雄化が合併したもの
アカハシハジロの外観影響が強いので
 アカハシハジロ雄×ホシハジロ雌 の属間雑種雌成鳥の雄化と判断。
Red Crested Pochard × Common Pochard Hybrid adult intersex female
昨シーズン南港平林貯木場で幾人かの人たちが観察した個体と聞いており
上記大西氏の講座中で画像紹介のあった個体と同一個体であり3年連続で
大阪湾岸部に渡来している可能性のあるものと認識している。

なお、この組み合わせ雑種はヨーロッパで比較的よく観察されており雌画像
についても次の書籍に紹介がある。ただし、解説・イラストともイマイチです。
「Wildfowl of Europe, Asia and North America 」 Sébastien Reeber著
Helm Identification Guides

netta-hybrid-bil
上嘴前端部はカルガモで黄色い部分が灰色味を帯び、側面に肉色からピンクの
部分がある。これはアカハシハジロ雌の嘴と同一パターンでホシハジロの前端
黒色部はアカハシハジロの黒色色素消失傾向によって相殺されて、このような
色味になってぼんやりと灰色帯が出ているものと考えられる。

netta-hybrid-front
なんだか正面顔は犬年ということもあってか犬顔に見える
嘴基部周辺には黒色の小斑点が散らばっている

neeta-hybrid-billbottom
嘴底部はピンクベージュ色味が大勢を占める 腮にも黒色の小斑点

netta-hybrid-feet
肩には半月白斑がぼんやりと波状斑で出現しており、メスに見られない
特徴が表れていると言える

netta-side
2012年3月21日 豊中市 アカハシハジロ雄第1回冬
肩に明瞭な半月白斑が認められる

netta-hybrid-wing
外側3枚P8からP10付近に初列風切外弁の暗色縁取りが見られるのが
アカハシハジロ雌の翼帯の特徴で、雄は幼鳥を除きP10まで翼帯淡色部
が及ぶのが主な雌雄差でホシハジロにはこの外弁暗色傾向はあっても
強くない。
アカハシハジロ・ホシハジロ共にメスは灰褐色の淡色翼帯なので次列風切
後縁の暗色縁取りが中途で途切れる傾向も同じでよく似るが、両者合成の
翼パターンをしていると言える。

netta-wing
2012年3月21日 豊中市 アカハシハジロ雄第1回冬
翼帯淡色部は雄の方が白っぽいが初列風切のパターンはこの雄第1回冬の
パターンに似る。成鳥雄のアカハシハジロはP10まで白っぽく見えることが多い。

netta-hybrid-scare
時折近づく他のカモ達を威嚇・追い払う

netta-hybrid-with
大きさはホシハジロ雄よりもやや大きいため、メス同士では大きさに差がある

netta-hybrid-underwing
助走飛び立ちをする雑種アカハシハジロ×ホシハジロ雌

hybrids
カモ好きにはたまらない豪華共演
上はメジロガモ×ホシハジロ雑種雄成鳥 独特の光沢が美しい
2種の雑種は1月19日に兵庫県の汽水河川にて撮影したもの

以上、雄化の根拠は1.虹彩色が暗赤色であること  通常メスは黒褐色
 2.嘴基部周囲に小黒斑が散在しており、これはアカハシハジロのオス幼羽から
   第1回冬への換羽中に見られる変化と同じ
 3.肩にぼんやりではあるが、半月白斑が存在する。これはオスの特徴
 4.背や腰、三列風切の色が暗色でメスとは明らかに異なる
 5.顔の眼の下付近の褐色は雄化ホシハジロ由来で、雑種雌にはないもの。
またホシハジロ雄化に見られる頭部の暗色化によって頭頂から後頸に
   かけてピンクゴールドの構造色が見られる。これは雑種雌では観察が
   できない特徴です。
                         
   以上のような理由で、雑種に雄化が合併しているのは明らかです。
え、雑種と雄化が同時に起こるなんて!と思ったアナタ・・・ 雑種1000羽と
純粋種1000羽をもし比較出来たら確実に雄化が検出できるのは雑種の方で
出現率は1桁どころか2桁以上も異なるであろうと推測されます。
雄化のメカニズムはこんなところからも推測できるかも知れません。

※ 今シーズンは寒波の影響もあってか越冬カモ類の個体数が伸び悩む一方
オオホシハジロ、コスズガモ、クビワキンクロ等北米のカモ類の観察例が多い
ようにも見受けられます。そんな中、奈良のガンカモ調査でオオホシハジロ雌が
見られたらしいので、大阪の記録も注意していた.。岸和田市で観察例が
あるとの情報で問題の画像を拝見したところ、ホシハジロ雄化が潜水して採餌
した結果、池底の泥が額に付着しその部分の羽毛が寝てしまったため、頭部
形状がオオホシハジロに似て見えたのだろう誤認だと判明しました。
著名人に質問して回答を得たらしいですが、見え方に関する知識もある程度
心得ておかないと、オオホシハジロの誤認はある程度の熟練者にもよくある事
ですので、判断にはくれぐれもご注意ください。 
                 雄化事例ということで1月23日 追記

昨年12月初旬に発行された「フィールド図鑑 日本の野鳥」 作画 水谷高英
解説 叶内拓哉 文一総合出版 をその後見る機会があった。
カモイラストは羽根レベルでの構造無理解が反映されてか、不正確でおまけに
野鳥業界の裸の王様 叶内氏の鉄板解説付きなので、十分に予想された事
ではあるが、この雑種の掲載があった。
アカハシハジロ×ホシハジロ♀の解説があるイラストはアカハジロ×キンクロ
ハジロ♀の誤りで正誤表にある渋面が上面の誤りだなどといった、どうでも
いいような誤りよりこちらを訂正すべき。鳥くん図鑑でもそうでしたが、文一の
図鑑正誤表は誤りを正す気はなさそうに見える。 そもそも説明通りの両者は
何を指すのかという意味がわからないまま作画・解説がなされている。単純に
アカハジロとアカハシハジロの誤記かと思いきや、隣にその雄の画像があり、
そうとも考えられない。作画の元となった画像は同じく文一の「日本の鳥 550
水辺の鳥」のカモの雑種欄に掲載されているもののはずで、その説明には
アカハジロ×ホシハジロまたはキンクロハジロと説明されていて問題ない。
ホシハジロが絡んだ雑種であれば、メスであっても波状斑が体羽に出現して
いなければならない。他のカモの解説・作画に問題のあることが如実に理解
できる部分で、キンクロハジロそっくりに描かれたイラストに対してホシハジロ
に近いと解説するなどホシハジロ×キンクロハジロ♂が赤紫味を帯びた金属
光沢の頭部で描かれておらず緑色。・・・ありえない。 2月3日追記

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