をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

ミコアイサの集合と分散

ミコアイサ♂成鳥
事情で更新できない日が続いたが、今後も更新できないかも知れない。
そうこうしている内に、季節はすっかり春めいて主だったすみれも開花した。
今回はミコアイサを通じて、種の位置、環境との関わり、カモ(鳥)の楽しみ方を
私なりの現在の視点で要約してみたい。

【種としての位置】
私の知る限りミコアイサの学名にはシノニムが存在する。
学名は世界共通の概念や命名規約に基づいて決定されるので、通常は一種に
つきひとつの学名しか存在しない。 しかし、現実には複数の学名が存在する
ことも珍しいことではない。これを同名(=同物異名)/シノニムと呼ぶ。

以下、学名のカタカナ表記には独習者の浅学ゆえ間違いがあるかも知れない。

Mergus albellus Linnaeus,1758 メルグス アルベルルス 潜水する白いカモといった意味
現在、国内の図鑑の多くはこの学名を採用しており、「日本鳥類目録-改訂第6版、日本鳥学会」
に準拠していることが、その理由として推測される。

Mergellus albellus Selby, 1840 メルゲルルス アルベルルス
意味するところなどは大差ないが、独立種としてアイサ属から分離している。
こちらは海外の表記に多く用いられ、フリーのWeb百科事典「Wikipedia」も採用している。
恐らく形態など、種々の分類学的観点から細長い嘴で大形種となるアイサ属から分離
独立させたものと推測する。
海外のサイトを参照するとオウギアイサとミコアイサの交雑種
                ホオジロガモとミコアイサの交雑種が見られる。
国内においても北海道でホオジロガモとミコアイサの交雑種が観察、撮影されている。
これら自然交雑種の存在はある意味類縁関係にあるのではないか?
生殖的隔離に乏しい状態におかれる場合があるのではないか?を窺わせる。
事実国内では1例の観察記録しかない北米種のオウギアイサとの関係はいざ知らず
ホオジロガモとミコアイサにおいては生活圏、食性、体の大きさ・外観に共通点が
見出されることが多い。
有色の虹彩・嘴・脚をもつホオジロガモではあるが、モノクロの配色パターンのミコアイサ
とはオス・メス共に配色が似ており、しばしば内陸の池などで両者が混在することもある。
系統の上から見ればスズガモ属の特徴に近いが小形で嘴が短いものをホオジロガモ属
とし、大形で棒状のノコギリのような嘴をもつものをアイサ属とするなら、オウギアイサや
ミコアイサはこれらの属の中間的形態をしているのだと納得できる。
因みにこの冬兵庫県の池に飛来して有名になったヒメハジロもホオジロガモ属のカモです。

やや深緑色に輝くパンダ黒斑
パンダ黒斑は強い順光下では深緑色光沢
黒だと思うところが実は緑色、白い部分が多く、背は黒い・・・オス外観はホオジロガモと同配色。
焦げ茶色の頭部に濃いグレーの体色・・・メス外観もホオジロガモと同配色ですね。

標準和名や細かな違いを覚えるのも大変なのに、学名やその背景まで覚えるなんて
冗談じゃないと考える方も少なからずいらっしゃるだろう。 しかし思考や記憶といった
ものは多面的なアプローチをしてはじめてゆるぎないものへと変化するのです。
種を進化学的に見た場合、系統樹が登場する。系統樹はその名の通り樹木の形状に
似ている。細かな根っこは大きな根に集合して幹を上り枝分かれし、細い枝先にも葉が
茂る。水は木の内部をこのように通り抜けやがて雨や雪となって地上に降り注ぐ。
そのとき、私が好きな大気光象を見せることもある。大地に降り注いだ水は山や地表
を浸食しながら次第に大きな流れとなって海に注ぐ、海面下では更に海嶺や海溝と
なって地球キャンバスの樹形を刻みこむ。このような樹形は我々の身体の内部にも
存在し血管や神経回路として機能している。ものの流れや形には相似性と循環の存在
があることを理解していただけるだろうか?
「種とは何か?」形態学、生物学、生態学、地理学、進化学どのような視点から眺めて
も同じ結論に至るものもあれば、学派や理論によっては異なる考えも存在する。
種の分化や収斂は我々のライフスパンをもってしては見届けられない部類のものかも
知れないが、対象となる生物はダイナミックに変化し続けているという視点が必要では
ないだろうか。生物の多様性を容認することができるのであれば、人間自身の思考の
多様性も認めてもよいのだろう。 日本人には古来「和を以て尊し」とする文化があり
西洋的な科学分類は肌に合わないところがある。 しかし、研究熱心なところも併せ
もっているので、アマチュアの底辺が拡大すれば生物分類や動物行動といった分野も
爆発的進展を遂げることが期待される。 「まずは見ようとする姿勢から始めよう!」 
アメリカ~という鳥は多いけれど、アメリカヒドリは独立種、アメリカコガモはコガモ亜種。
雑種の存在数からすれば、生殖的隔離はむしろアメリカコガモにあるように?
動物、植物等の国際命名規約は学名の正当性は規定しても学問的結果の統合まで
は規定していないようだ。

【ミコアイサの飛来環境】
百舌鳥古墳群に飛来するミコアイサは圧倒的に履中陵の濠に偏在している。
今期は年末までに飛来羽数がピークに達し、60羽に迫った。
ところがである。求愛のディスプレイが活発化した年明けから早くも分散が
始まり1/5にはニサンザイ古墳、前後して大泉緑地の大泉池に飛来。
以後大群は小群へと変化し急速に羽数を減らした。

1/5護岸付近で採餌するミコアイサ♂
1/5のミコアイサ-ニサンザイ古墳
その後2月に入って安定飛来するようになり数羽単位で現在に至っている。

1/21には昨年同様仁徳陵内濠にも飛来した。昨年と初認日が同じなのだ。
仁徳陵内濠のミコアイサ
仁徳陵内濠のミコアイサ、デジスコ画像トリミング
羽数は10数羽だが安定して現在に至っている。

このようなミコアイサの移動はかつては稀なものであったし、履中陵の濠は安定的に
越冬地として利用されていたように思える。
しかし、今や履中陵は越冬集合地としての役割が大きくなり、採餌や求愛といった
越冬生活は周辺地に分散したと考えても不思議ではない状況へと変化した。

では、ミコアイサが安定的に飛来する要素とは何なのか?
考え得るひとつの原因は過去に大きな障害を受けることなく飛来した候補地。
それに、主食であろうと思われる適当な大きさの魚類の存在だろうか。
では、直接的にミコアイサの増加要因となった魚種は何だろうか?
過去の観察からシギ・チドリもそうだが、ミコアイサの淡水産巻き貝捕食も
見ないわけではないが、一部の外来魚の幼魚が一因であろうと考えている。
それは観察から判断する限り、ブルーギルではないかと考えている。
ブルーギルを燕下するミコアイサ♂
ブルーギルを燕下するミコアイサ♂
各地の湖でカワウとともに漁業被害を出しているカワアイサの増加も外来魚の増加
と密接に関係していることは恐らく想像に難くない。

古墳のミコアイサは投げるパンには寄りつかない。
しかし岸和田市の公園にはパンに来るミコアイサがいることを以前記事にした。
彼は今期その能力を更にアップさせ、何と上陸してのパン食い競争に参戦した。
上陸したミコアイサ
俺ってメタボ?見下げた奴ですか?

野生動物に見境なく餌を与えることには賛成できない。
しかし、ハクチョウの餌付けまで馴化を省いて一気に中断した背景には人間の
エゴも垣間見える。自然に採餌できる代替地を用意しないで餌を杓子定規に
やらないのは「自然保護の名を語る暴挙にも思える」・・・それら提唱者の一部
はかつて積極的に給餌を推進し、地理的に隔離された植物を移植した人物も
含むのではないか?
パンを横取りするミコアイサ6画像に続きます


●一連の横取り動作
飛翔
パンが貰えるとあって、かなり離れた場所から一直線に飛来

ヒドリの群れに混じる
ヒドリガモと水際でパンの競り合い・・・体格的に不利

ヒドリの下を潜水
ヒドリガモの下を潜行

潜行して機会を窺う
パンを銜えたヒドリガモに潜行随伴するミコアイサ

水面下からパンを奪う
潜水特性を活かした見事な横取り

一目散に逃げる
パンを奪ったが最後、逃げる、逃げる
この横取り採餌法、以前メジロガモがするのを見たことがある

このミコアイサは人間に近づくという危険を冒してなぜパンに来だしたのか?
あるひとつの仮説を立てるならばメス獲得の優位性だろうか。
更に人間という大きな勢力をもつ動物に接近して生き残りを模索している。
そんな考え方もありうるだろう。 人間が考える彼ら本来の生き方とは、
それこそある特定の人間の概念に存在する虚像ではないのか。
そう考えてみると若い個体やメスはしばしば越冬地の開拓に際し
調査斑の役割を果たし、世代を越えた環境への順応が種を絶滅の
危機から守っている。彼らは自力で絶滅回避の行動を起こしている。
そんな一端を垣間見て誰が「見下げた奴」「不精者」の汚名を着せ
られるのだろうか?私たちは種を絶滅から救う革命者を見ているの
かも知れない。
パンに来ていても、休日のようにパンを与える人が多いと、必要以上
に食べることはない。お腹一杯になれば池の中央で休んでいる。
ところが雨天の池では様子が一変する。・・・とパンに頼ることなく
魚類を潜水採餌している。 臨機応変にして栄養状態の良いこの
ミコアイサはしばしば複数のメスを従えている。

【カモを見る楽しみ】
カモを見る・・・そのこと自体図鑑の写真と照合してオスが見られたら、ハイ1種
こんな見方をしている方は実に多いと思う。
けれど照合した写真と目の前のカモはよく似てはいるけど、微妙に違う・・・
そう感じた方も意外に多いことでしょう。それは図鑑掲載の写真が換羽終了を
待って生殖羽になってから撮影されることが多いからでしょうか。

カモの観察会は多く実施されているし、比較的大きく身近なカモは観察の
対象として適している・・・にも関わらず長年にわたり初歩的な観察対象と
して換羽・生活・行動が教科書的に解説されることはなかった。
しかし、欧米の生物分類や鳥見の礎がもたらされた時期には研究され
書物も発行されている。 それら先達の著述には今以て触れてはいない
のだけれど、徐々に先達の著した書籍にも目を通していきたい。
この辺りは専門の解説書や図鑑の多いすみれとは背景が異なる。
だからこそ、彼らのことを少しでも知ろうとするのかも知れない。

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