をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

お渓畔

今回はタチツボスミレの変種ケイリュウタチツボスミレについて

実はこのすみれの存在はすみれを見始めた頃から認識してましたが、はっきり意識して
観察するようになったのはここ最近のことなので、いつになく大量の画像とともにその
実像と現在について記事にしてみました。
本日の記事タイトル、「お渓畔」は京阪電鉄のイメージキャラクター「おけいはん」に
因む。舞妓はんに準じ、けい子さんをおけいはんと呼び社名とひっかけたものらしいが
実際は目的地へのアクセスに都合のよい「お阪急」で行ってきました("▽"*)

【渓流沿い植物】

「A new rheophilous variety,Viola grypoceras var. ripensis,
   from central and western Honshu,Japan」
「渓流沿いに生育するタチツボスミレの新変種」は1996年に報告された
原記載のタイトルですみれ界の大御所、山田直樹氏、鈴木才将氏、それに
当時大阪市立自然史博物館学芸員(現、岸和田自然資料館館長)の岡本素治氏
による。
rheophilous=渓流沿いの
rheophyte=渓流沿い植物
ripensis=rip英語のriverと同一語源+ensis名詞を形容詞化する接尾語で
 こちらも川沿いのといった意味
そのため英語タイトルには本州中部及び西部に見られる渓流沿い新変種、
ケイリュウタチツボスミレとより詳しい内容を含む。
大阪市立自然史博物館は近いこともあって、収蔵基準標本が閲覧できないかと
思いでかけてみたが、やはり個人への公開はしておらず、アマチュアの壁は高い。
記載のある大阪市立自然史博物館研究報告50号を購入して帰宅したが、現在
これらの報告がPDF化されweb公開の準備が進んでいるので、近い将来無償閲覧が
可能になるだろう。

ヒメレンゲ、ネコヤナギ、ヤシャゼンマイ、サツキ、カワラハンノキ等も渓畔植物
として知られ、これらの見られる川岸にはケイリュウタチツボスミレが生育している
可能性が高くなる。
サツキと一緒
サツキの根元で咲くケイリュウタチツボスミレ

ソメイヨシノ花弁で見る株、葉の大きさ
ケイリュウタチツボスミレの鋸歯はミシン目状
桜花弁と未開花株
桜花弁と未開花株、大きさ対比

桜花弁と通常株
桜花弁と山側開花通常株、大きさ対比

すみれの仲間:他の渓畔種
南西諸島のヤクシマ、アマミ、ヤエヤマスミレなども同様な仲間。

また、以下のすみれの関係は局地的分布ながら類似の母種・変種関係に近いのでは?

・コミヤマスミレ-ヒュウガスミレ
・ナガハシスミレ-アワガタケスミレ
・ニョイスミレ-コケスミレ
・オキナワスミレ-オリヅルスミレ
実際には高地要素等単一の変異ではないと思われるが・・・

また、水流・水圧に代えて標高・気流・風圧に対する変種ではと考えられるものに

スミレ-ホコバスミレの関係があり
葉の形がホソバシロスミレに似ているところも興味深い
ケイリュウタチツボスミレとスミレ
この場所にもスミレ(マンジュリカ)が見られた。 上のケイリュウタチツボスミレすぐ下。
スミレ特有の翼が発達しておらず、花後はホコバスミレ状の翼形を示すのか興味深い。
マンジュリカの翼は花後の夏葉で明瞭になることが多いが、変種アツバスミレのように花期に
明瞭な翼を示し、特に葉身基部でくびれるものも見られる。多分、そのような翼にならない?

環境
生育環境1
こんなところに見られます

生育環境2
岩の隙間に根をおろしているものも多い

特徴
・花期の植物体は母種と比べてかなり小さい
 花径>葉身サイズで葉幅の倍くらいの花径であることが多い
・果実期の茎葉基部は広楔形~切形
・無毛でクチクラ層の発達した照葉
・丈夫な地下茎と発達した根
・しなやかな地上茎
・すぐに発芽する種子      ・・・等が母種との相違点
 上記報告の挿入画は花のサイズが小さく、単に小型のタチツボスミレに見えなくもない

葉と托葉
葉と托葉

花アップ
花アップ

花側面
花側面

実生カエデの芽吹きと
実生カエデの芽吹きと

バリエーション

1
向陽地、多くはこの株のように花付きが多い

2
向陽地

3
半日陰

4
半日陰

5
半日陰、大きさ以外は母種に似ている

6
半日陰、丸弁傾向

7
半日陰

8
日陰、ジャゴケも見られる支流合流地の岩裏。花径・葉サイズは母種と同程度、葉の色も薄目

9
ほぼ日陰

10
向陽地

水湿環境や日照でやや母種に連続した形態の変化が見られないだろうか?
細弁と言われる花弁形状にも、同じ場所でこれだけの変化がある

分布
報告記載時には神奈川県~山口県の主に太平洋側に分布とされたが、その後日本海側や四国でも
報告があり、個人的印象では東北~九州・四国の各地に分布すると推定している。
ただ、九州はコタチツボスミレの分布と重なる地域を多く含み、花期の外観から容易にこれらを
区別するのが難しいのではないかと思う。
また、河川の中流域に特徴的な個体群が見られる場合が多い(一般に○○峡などと呼ばれる場所)
のだけれど、一時的に増水・水流に押し流される場所というのは源流部でも見られ、そんな場所
にはほぼ同様変化のタチツボスミレが見られる。これらも含めてケイリュウタチツボスミレとする
ならば、報告記載の事例にも見られるコタチツボスミレとの混同はかなり高率に発生しているの
ではないかと考える。
また、現在報告されていない大阪府を含め多くの場所からも、この変種は発見可能だと思われる。

水面からの位置変化と見られる個体、オオタチツボスミレ6画像に続きます





水面上2m位置
水面上2m、花径=葉サイズくらいで、基部は花期から切形、ただ花弁は細弁

水面上2m
上記画像の葉のアップ

水面上2m
こちらは同じ高さで水平に2m程移動した場所の個体、細弁ながら母種タイプ

水面上3m
水面上3m、山側斜面の個体。葉には赤斑が見られたりして細弁ながら母種タイプ

水面上5m
水面上5m、山側斜面の個体。葉の緑色が明るく、細弁ながら母種タイプ
更に山側の個体は桜花弁と対比した最初のほうの画像

オオタチツボスミレ
近くで見たオオタチツボスミレ
京都では南部でもオオタチツボスミレが見られるが、大阪では少なくとも南部で観察できない。

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