をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

メス様外観のミコアイサ

最近、よく聞くことに「今年の冬鳥はおかしい」というものがある。
確かにカモにしても小鳥類にしても数や渡来時期にただならぬものがある。
しかし、いつものとか普通だったらという概念はそもそもどこから来ているだろうか。
人類のみが爆発的に増加し、他の生物たちの生活資源まで分捕ってしまったら、それは
ただ人類の将来をも危うくしていることに他ならない。
毎年のように聞かれる「何かおかしい」この言葉を耳にする度、私は強くそう思う。

身の回りの生き物や自然を見ていて、何かの異変を察知することは、誰にでもできる。
しかし、確かな根拠・言い換えれば科学的知見に基づいてそれらを知らしめるのは、
そう簡単なことではない。思い込みと科学的根拠はその出発時点では大差ない。
わざわざことわるほどのものではないが、以下の内容も思い込み要素が強いかも知れない。

オスの白黒の対比がひときわ鮮烈な印象を与えるミコアイサ。
しかし、秋遅くに飛来した時点では全てがメスのような外観をしている。
例年多くの個体が飛来する履中陵の濠でも既にピークを過ぎたかと思える個体数に達した。
ピーク時には例年70羽を超えるほどのミコアイサでも、オス成鳥の換羽終了と共に急激に
その個体数が減少し、周辺部の古墳濠や池に分散していく。

では、全部がメスに見えるミコアイサの雌雄や成鳥・幼鳥を区別する方法はあるだろうか?
ミコアイサのエクリプスでは目の周囲が黒くないと言われる。
これは事実なのだが、繁殖羽に移行していく過程で最終的に黒くなる。
そのためもあって、オスのエクリプス時の頭部は赤茶色味が強いとか焦げ茶色味が強いと
いった別の観点で語られることがある。
そういった観点も必要だが、もっとはっきりと区別できる識別点が必要ではなかろうか。

最近の撮影画像 2011.12中旬履中陵
richu1112
画像に入れたキャプションのような判断を私はしている。
渡来初期の群れに占める幼鳥率は高い、しかもオスの比率が高いと判断している。
12月初旬でオスと明らかに判断できるのは、オス成鳥が大半を占める。
中旬を過ぎると幼鳥の中でも換羽進行の早いオスが徐々にオスの兆候を見せ始める。
しかし、メスは後頭部に張り出した明るい栗茶色の頭部をもち、オスに比べて喉~頬に
かけての白色部が小さく、栗茶色と白色部の境界がやや明瞭なので、よく見れば
判別が可能。しばしば境界部は「M」字状。オスは「つ」字状で切れ込みが大きい。
光線状態によっては栗茶色が暗色に見えたり、頬の白色部がやや大きく見えることも
あるので注意することは必要。
全てがメス様外観を呈する中で、目先が明らかに黒いのはメス成鳥だけのはず。
エクリプスの目先は黒くない、残る黒くない目先の個体は幼鳥達であるはずだ。
ところが渡来後、日数が経過するとエクリプスも幼鳥も次第に目先が黒くなってくる。
画像一番奥の個体の目先は下縁が黒くなりつつあるし、手前の個体は真黒ではないが
かなり黒っぽい。

adt-female
メス成鳥と考える個体の外観 2010.1初旬ニサンザイ古墳

male-eclipse
オス成鳥・エクリプスから繁殖羽への移行初期、白い眉状白斑出現時点で体羽はまだメス様
2009.12初旬 岸和田市

1w-itasuke110319
オス幼鳥、 2011年3月中旬・イタスケ古墳 白い眉状白斑出現時点で体羽は既にオス
様外観、目先も真黒。 多くの幼鳥オスがオスと判別できる時期は2,3月頃と考えられる。

adt-male
エクリプス~繁殖羽への換羽では全体の換羽が万遍なく進み、その中頃で目先が黒くなる。
2009.11中旬履中陵

adt-male-wingflap
上の個体の羽ばたき画像 2009.11中旬履中陵
次列風切後縁の白帯はやや広く、次列の黒色帯とその上部黒色帯の境界白色部は狭い。
小雨覆に見えるゴルフクラブのクラブヘッド状の白色部は幅広く大きい。

1w-juv-male-fly
オス幼鳥飛翔画像 2010.1中旬
クラブヘッド状白色部と次列後縁白色帯内側をつなぐ白線はまだ出現していない
またその他の翼上面は灰褐色傾向が強く、全体に羽衣はウロコ状の質感が残存する

1w-female-earlyfeb
2月初旬のメス幼鳥翼上面パターン。
2月頃にはオスであればクラブヘッド状白色部と次列後縁白色帯内側をつなぐ白線が出現し
翼付根上側に太く白い縦線が見られるようになる。メスにはそれが見えてこない。

0124-juv-female
2008.1下旬ニサンザイ古墳 メス幼鳥外観 体羽に褐色羽が混じる<追加>


fem-juv-ongrnd
2008.1下旬ニサンザイ古墳 上の個体と同一 至近距離で撮影できた<追加>
小雨覆の白色部は灰色羽縁によってメッシュ状に見える。ここがメッシュ状に見えれば幼鳥。

female-wing
メス成鳥、翼上面パターン 2009.11下旬
小雨覆のクラブヘッド状白色部は狭く小さい

male-ecl-wing
上のエクリプス個体の羽ばたき画像 2009.11下旬

adt-wing-10mar
2009.3初旬、上の羽ばたき画像と同一個体前シーズン画像
エクリプスでも繁殖羽でも翼付根の太い白色縦線以外は変化がない
ウミアイサの幼鳥オスの翼上面パターンを先日紹介したが、よく似ているでしょう。
ヒメハジロやホオジロガモなども同様なパターンの組み合わせでオスの白色部が大きいです

香川県でもミコアイサが多く飛来する場所があり、Sさんやコメントに伺ったFさんは詳細な
画像をたくさん撮影されている。Fさんにコメントした日のブログ画像は上記翼付根の太い
白色縦線が浮き上がってきたオス幼鳥の飛翔がよく撮られているし、問い合わせいただいた
Sさんにはその後私情で返信出来なかった。共に貴重な画像を見せて頂いたことが、現在の
自身の識別の礎となっている。両氏にはこの場で感謝したい。
幼鳥識別の意識がないままに、メスの個体識別を頭部外観から試みるのは無理があるだろう。

PageTop