をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

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野鳥を観察していると、「あれ、この鳥は他と少し違うな!」と感じることが
ときどきあって、それは多分同じ種なんだろうけど、大きさ、形、色が違う。
こんな経験はだれしもあることではないだろうか。
ある程度長く観察されている方なら、花粉が嘴や胸に付着して黄色や橙色が胸
や嘴付近を着色したと気づくものでも、初心者でこれが別種の鳥と考えれば、
なかなかに正解にたどりつけないこともある。

今日、紹介するのはキンクロハジロの嘴が赤茶色になったもの。
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3月21日、岸和田市 以下4枚目まで同所・同日撮影 キンクロハジロ雄成鳥
頭部が緑色の光沢をしているのは気にしないでください。夕方の光は色温度の変化で
赤味(黄色味)を帯びるので紫光沢がシフトして緑色に見えているのです。
構造色によって見える色は固定した色でなく、羽構造、背景色素、光線状態によって
多彩に変化するものです。

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キンクロハジロ雌

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キンクロハジロ雌

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キンクロハジロ雄成鳥

この冬は南下越冬したキンクロハジロが例年より多かったのか、3月に観察した数は
どこも過去最大数規模でした。ここのカモも冬季に池干しされている関係で近隣または
南西部で越冬した個体が帰途立ち寄っている可能性が高いと考えました。
ほとんどの個体の嘴に赤茶色の染まりが確認できることから、この池に飛来するまでの
越冬地における採餌で染まった可能性があって、同じ地域の越冬群が移動したと考える
のが自然でしょう。このような嘴の染まりは秋季に奈良県のため池で観察したホシハジロ
にも見られたことがあります。
嘴は我々の爪と同じように、ケラチンというたんぱく質でできています。羽もケラチンで
できているので、過去に田渋や鉄染まりという内容で紹介したことがあります。では嘴が
赤茶色に染まるこの現象は採餌様式と深い関係にあるのでしょうか?
ホシハジロやキンクロハジロは潜水採餌ガモのグループですが、これまで胸腹部が赤茶色
に染まったカモはマガモ属に多い感じですね。ただ、ミコアイサやカワアイサのピンク色
も同じ由来と考えれば、腹部が赤茶色に染まるのは水面採餌ガモと断定するわけにはいき
ません。そもそもこの染まりのメカニズムも観察だけでは容易に解明できません。
冬季に多かったカルガモは入れ替わるように数を減らし、どこのカルガモも例年規模に
減少してしまいました。

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キンクロハジロ雌 大阪市3月28日
このキンクロハジロ雌は嘴基部上部が白い、いわゆるスズガモ雌型をしています。
下尾筒も不明瞭に白く、キンクロハジロには少なくとも嘴基部上部が白いタイプ、
下尾筒が白いタイプ、その両方を兼ね備えたタイプの亜型が存在します。
これをスズガモの血統が混じったものとするか、同種内の個体差とするかは人に
よって異なるようです。私はこのような明瞭な他種要素を示さない(スズガモの
雌要素である、背の波状斑、嘴・頭部形状が明確に見えない場合)外観のものは
変異と見るべきだと考えています。ただ、外国図鑑の雑種説明欄にマイヤーの雑種
頻度推定と共にイギリス中央部内陸のスズガモには純粋種に比して20%の雑種
形質が観察できるといった記載があります。
私は主観察エリアにキンクロハジロの数が多くないこともあって、この種の幼鳥
雌雄に関してはあまり自信がありません。そのため雑種の推定も疑問がありますが
20%というのは極めて高い率だと思います。

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