をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

写真が嘘をつくとき

写真が必ずしも真実を描き出していないということは、万人が知るところ。

たとえば、我々の視覚は様々な錯視から現象の誤認を犯しやすいし、外界の認識は
人によって異なり、また目から入った情報は脳で処理されてはじめて意味をもつため
明るさや色彩の再現範囲は生体の種により、機器により当然異なってくる。

例1. 航空機事故の証拠写真例 (写真の白飛びを翼への着氷と誤認した例)
  1958年2月 西ドイツリーム空港を給油後に離陸しようとしたエアスピードアンバサダー機は
 複数回の離陸試行後に離陸可能速度に到達せず滑走路をオーバーラン、空家に激突炎上した。 この
 事故では英国のサッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドの選手他乗員乗客44名中23名
 が死亡し「ミュンヘンの悲劇」と呼ばれることとなった。 事故後の西ドイツ側調査委の報告では、
 翼への着氷で十分な揚力が得られず事故を招いたとして、事故直前に撮影された機体翼が白い写真
 をその証拠として採用した。結果、機長に着氷除去の義務を怠ったとの判断が下され、滑走路の積雪
 凍結による失速が真の原因であることが判明したのは11年後の真相究明を待たねばならなかった。
 フィルムを使用したカメラにはラチチュード、デジタルカメラにはダイナミックレンジという再現が
 可能な明暗の範囲が存在する。この範囲を超えた画像は真白になる(白飛び)、満たない画像は真黒
 (黒潰れ)となる事実を理解した上で画像を検証し、様々な角度から事故を検証、利害関係を超越
 した判断があれば、多くの人命・人生を犠牲にしたこの事故は起こり得なかった。

例2. 気象光学現象の知識がなく、120度幻日を地震に関連した雲と誤認した例
  本日の読売新聞の朝刊気流欄に掲載された、「わたしの目・・・奇妙な雲」の写真
 投稿者は恐らく、幻日環や120度幻日という気象光学現象を知らない。天候が下り坂にあるような
 高空に白雲がうっすらかかるような日にはアーク他、このような現象が見られやすい。飛行機雲もこの
 ような日には見られやすい。ただ、未知の現象を経験すると不吉な予兆として考えられたり、色鮮やか
 な環水平アークのように吉兆ととらえる方が多いのも事実で、一部の方はこれら現象を地震と関連づけ
 今回の写真もチリの大地震と関連付けているが根拠はない。

例3. STAP細胞のネイチャー誌投稿論文で使用された貼り付け合成画像他の例
実験や観察の記録として写真は大きな意味をもつ。その詳細をいくら文章で解説しても一枚の画像に
 勝る記述は至難の業。ところがデジタルカメラ時代の画像は加工も容易なため、オリジナル画像への
 加工はシャープネス(輪郭)強調や色彩の強弱を調整する彩度変更等オリジナル画像の価値を損失
 しない範囲にとどめるべきで、新たな色彩を加えたり、複数画像の合成などは一般認識として改ざん
 に相当し、写真コンテスト等でも重複入賞などと共にその有無が厳しく審査される。
  ところで、この論文の筆頭著者である小保方氏は、電気泳動結果の切り貼り合成画像は単純ミスと
 主張し、調査委の改ざん認定に不服を申し立てている。一連の画像はどのような目的で使用され、
 なぜ、論文中で問題の画像が使用されたかを考えると、氏が論文の結果に都合のよい画像に切り貼り
 転用した画像には悪意(意図的使用)があったと結論するのが常識。
 その後の調査でこの論文提出以前に米サイエンスへの論文投稿が同様の画像切り貼りを査読者から
 指摘され、受理されていない事実を考えると、共著者・関係者の責任も相当程度重いだろう。
 例えて言うならば電気泳動の結果は一度きりの、その時同じ泳動槽で扱った試料にのみ科学的に事実
 として認められる内容が起きるもので、同時に泳動された既知結果の判定できるコントロールを指標
 として判読される。言わばマラソンのように大会ごとにコンディションが違うのが当然なので新記録
 が採用されることなく最高記録と表現されるそのゴール記録画像をトラックの42.195kmでの
 ゴールから背景のみを切り取って貼り付けて、世界新記録として公表したに等しい行為である。
 氏が試薬の調製や機器の保守・コントロールを他人に任せていたとしても、都合のいいレーン結果の
 縮尺まで変更合成して使用したという行為はラボ業務を経験した者からは信じられないことです。
 幸か不幸か氏は画像改変に痕跡が残ること、その作業結果を巧妙にごまかす技術が存在しなかった
 ことで、内部あるいは外部の指摘から、その行為が白日のもとに晒される結果となった。
 マミジロキビタキを近所で見たという画像を見て、眉斑が白いだけでマミジロキビタキだと判断する
 人がいれば、それは今回のような改ざんを見逃す結果となる。眉斑の出方、三列風切の白色や脇腹の
 色味等、異なる部分は他にもあるからです。

他にも広角レンズの遠近誇張効果、望遠レンズの立ち上がり効果を利用したトリック画像等は日常的に
楽しまれていて、詰まるところ写真が真を写すか否かは使用する人の意思、見る人の意思に依存して
いる部分が大きい。

前置きがたいそう長くなってしまったが、個人で入手できず、図書館での貸し出しを待っていた近刊
の野鳥写真図鑑2冊が手元にあるので、その感想を・・・。
 まずは、今回の鳥類目録改訂で大幅に見直された部分の分類における解説や記載されている亜種が
外見から判別する手段があるか、あるならばどの点で識別できるかの説明が是非とも欲しいところだが
今のところ、どの図鑑にも鳥類目録改訂第7版と一般ユーザーを分類上結びつける使命を感じない。
鳥類目録が改訂されるたびに、また次はいつ改訂されるかわからない、これらの分類に意味もわからず
振り回されるばかりか、図鑑を更新しなければならないとしたら、有難味は薄い。

【決定版 日本の野鳥650 平凡社】

掲載写真の全てを真木広造氏が撮影、解説までを担当した図鑑も存在するが、客観的要素や専門性も
加味して初版では大西氏が、今回の新版では五百沢氏も参加した定番写真図鑑。
旧590では写真の完成度が高い半面、バリエーションや雌雄・齢差写真が少なかった。写真集では
ないので、今回の紙質変更で受けた写真光沢の不足は気にならないが、成鳥の雌雄以外にどのような
写真を掲載するかで、統一された基準で構成されているとは言えない部分もあり、資料性という面で
この版形を維持しつつ、多数の情報を盛り込むには限界のようなものも感じる。
しかしながら、野鳥写真図鑑としてのスタンダード性には揺るぎないものを感じ、付表や引用文献の
記載も充実している。

【鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670 文一総合出版】

言わずと知れた、鳥業界の有名人=鳥くんが手がけた切りぬき並列(クロップ&アレンジ)スタイル
の野鳥図鑑。切り抜いて並べるスタイルは斬新なように感じるが、フィールドのための野鳥図鑑…
高木清和 山と渓谷社 が存在するし、鳥以外の図鑑にも既刊書が存在する。また、このスタイルで
掲載された雑誌Birder 2007年11月号に間違いが多かったことから、良い印象がない。
バンディング調査や識別で高名な山階の茂田氏が監修してはいるが、ほとんど著者の意向を尊重し、
種の誤判断でさえ、助言されていないことがうかがえる。 論文も図鑑も著者の判断次第で却下も
採用されれば、その逆もありうる。
 その解説スタイルやターゲットとする読者層を推定するに、既存の図鑑に満足できず、かといって
解説文を長々と読み込むことに抵抗のある、お気楽読者層…言わばマンガ世代に向けた識別モドキ本
といった感じ。モドキと表現したのは、なんか聞きかじりのええとこ情報や画像は満載だけれど本人
が勉強して得たオリジナルの識別情報や齢査定の方法はどこに書いてる?…そう思うとノリのいい
性格やパフォーマンスは感じるが、カモメ観察ノートの際に感じた用語の曖昧さに逃げ込んでいる 
面も感じられ、絶対的必要条件である例示画像に誤りがないという面で、無駄に画像が多いだけ。
こう書いているが、同じ鳥業界の方たちは概ね良好な書評を書いている。同じ業界人でありながら
徹底的に観察から真実にこだわる氏原氏は、誤りが多いことを指摘しているが、このような方がいる
ことは売れる本だけを量産し、真に読者が望む内容を軽んずる風潮を軌道修正している。

よく似た種の識別例
カワウとウミウが識別できるかは、わかっているという方でも大半は口角に尖りのある・なしと
答える。 正直、私自身はこの方法では完全に見分けができなかった。間近にいるカワウがカワウと
断言するに十分な自信を持てたのは3年ほど前、裸出部である黄色部分の上下対称性に着目してから
のことでした。野鳥の会古参のある方によれば、昔は川にいればカワウ、海にいればウミウとしていた
時代があり、その差を云々するようになったのは比較的最近のことと言う。
カワウの黄色裸出部は目の後方では見られず、下嘴側では大きく後方にせり出すため会合線ー口角の
ラインで折り返すと上下非対称です。一方ウミウのそれは目の後方にも見られ、下嘴側でも同程度に
せり出すため上下対称形です。下嘴の黄色部分は夏羽時黒味を帯びることがあり、この部分も黄色
と考慮して判断しなければなりません。そう考えると、かなりの距離があっても、カワウの個体差や
角度で口角に尖りがあっても、夏羽・冬羽、成鳥・幼鳥でも迷うことはなくなり、大阪南部にウミウが
少数ながら観察できることに自信が持てた。 この図鑑ではオーソドックスに尖りで説明している。
夏羽のヒメウには下嘴側に少しオレンジ色裸出部があります。一方、チシマウガラスの夏羽には上嘴側
目周囲に広い裸出部があり、嘴の形状や大きさ、観察場所と併せて判断すると迷いがなくなります。

シロチドリの亜種、ハシボソシロチドリ
この鳥くん図鑑では謎の多い亜種ハシボソシロチドリの画像が掲載され、襟の黒色帯が広く、嘴が長い
と説明されています。この解説に従えば以下の画像は亜種ハシボソシロチドリでよさそうですが、この
記述だけでそう判断できるのか疑問が残ります。

k-plover-front
ここ数日の画像から シロチドリ正面 胸の黒色首輪がほぼ繋がっている個体、大阪湾ではやや普通

k-plover-rside
シロチドリ右側面 雄夏羽後期

k-plover-lside
ハシボソシロチドリ左側面 かと判断できそうですが上2枚と同じ個体です。
姿勢によって変化する部分を判断の基準にする場合は他の相違点も併せて判断すべきです。


【カモの画像に見る誤判断】
既に氏原氏が指摘している不適切なカモ画像。興味がお有りの方は既にどの部分のことを指している
かはお分かりだと思う。内容詳細については明日にでも掲載してみよう。既に公表された正誤表には
学名のスペリングミスとかさして重要でない修正も含まれているが、肝心の画像間違いには触れては
いないようですから。

以下、5月11日に追記
オシドリ雄幼鳥(原文では雌雄記号+J)・・・オシドリエクリプス、胸の横線が少し残存している
オカヨシガモ雄エクリプス・・・オカヨシガモ雄幼鳥
オカヨシガモ雄・・・飛翔画像は成鳥でなく1wであるが、その表記はない
ヨシガモ雄エクリプス・・・雌非繁殖羽
ヨシガモ幼鳥・・・ヨシガモ雌1w移行中
アメリカヒドリ雌幼鳥・・・アメリカヒドリ雌成鳥
マガモ雄エクリプス・・・マガモ雄幼鳥
カルガモ雄・・・カルガモ雌成鳥、 雌雄2羽の画像説明に間違いはないので三列風切の見方に問題
ハシビロガモ幼鳥・・・ハシビロガモ雌非繁殖羽、背(肩羽)比べも雌成鳥の非繁殖羽・繁殖羽
オナガガモ雄サブエクリプス・・・雄幼羽から1w移行中、サブエクリプスをオナガガモに適用?
シマアジエクリプス・・・恐らく雄1w、飛翔画像で雌雄の雨覆の色の違いを表現したかった?
トモエガモ雄エクリプス・・・トモエガモ雌成鳥
トモエガモ雄サブエクリプス・・・トモエガモエクリプスから繁殖羽移行中
コガモ雄エクリプス・・・コガモ雌非繁殖羽
亜種コガモ幼鳥・・・コガモエクリプス
メジロガモ雄・・・メジロガモxアカハジロ雑種雄繁殖羽
メジロガモ雌・・・メジロガモ雌幼鳥
スズガモ雌の目先の白色範囲・・・個体差で説明するも画像は雄幼羽
スズガモ・コスズガモ「正面顔・嘴先」比べ・・・姿勢や個体差を無視しており無効な識別点
クビワキンクロ雄1w・・・2月に脇の白色部が出現していないことなどから、虹彩も含め雌?
アカハシハジロ雄成鳥・・・アカハシハジロ雄1w
アカハシハジロ雄未成鳥・・・アカハシハジロ雄幼羽から1w移行中
アカハシハジロ幼鳥・・・オカヨシガモ成鳥、アルバム時代からの典型的誤認
クロガモ雄成鳥非繁殖羽・・・摩耗した羽縁や褐色味が強く羽衣からは未成鳥
ヒメハジロ雌成鳥・・・ヒメハジロ雄幼羽から1w移行初期の可能性
ホオジロガモ雌1w・・・胸の白色範囲から推定雄幼羽から1w移行中
ミコアイサ雄1w・・・ミコアイサエクリプスから繁殖羽移行中
ウミアイサ雄1w・・・ウミアイサ雌と画像を入れ替えると正解、雌成鳥
カワアイサ雌成鳥・・・これも幼鳥と入れ替えると正解、カワアイサ雌1w

他にも用語の理解という点、幼鳥の意味やJ、immの使い分けに違和感のあるものが多かった
カモメ観察ノートで幼羽と表記される部分に幼鳥が使用されており、はっきりした定義のない
幼鳥を一部では幼羽幼鳥の意味で用い、あるときはそれ以外の意味で用いるなど知識整理不十分
と感じる部分がある。氏原氏とは何の連絡も取り合っていないし、氏の指摘は水面採餌ガモに
とどまっているが、カモ類に関しては気付く範囲で記した。なお、ツクシガモ雌の画像も成鳥で
なく、他のカモ類と繁殖羽及びその特徴が異なることには触れられていない。

PageTop