をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

雄化(ゆうか)するということ

http://ci.nii.ac.jp/naid/110003363406
Ciniiにある動物学雑誌 69(9), 277-279, 1960-09-15 マガモ雌の所謂「雄化」4例
英文抄録を和訳すると・・・
抄録中の単語 Bluba ossea は Bulba osseaの誤植と考えられる。

日本には、これまでにただ4例の雄化羽装をしたマガモ雌の採集記録が存在する。
このうち雄化個体第2例は山階博士(’48)が調査されたもので、千葉県手賀沼産で、
左右の卵巣が精巣に置き換わっていることが判明している。
残りの例については同様の現象が老齢の雌に見られ、オシドリ、コガモ、オナガガモに
おいても観察されるのは卵巣の退縮あるいは異常によるものに違いない。
気管に属する器官である骨球、つまりはオスに特有の器管はこれら雄化個体にはなく
性ホルモンに起因すると考えられる。

ここで言う骨球は著者の黒田長禮博士が日本語本文中で使用している語で、該当する
器官はJOGA第16回集会(2013)・・・日本鳥学会名古屋大会(於:名城大学天白校舎)
で小木曽 チエ氏が発表した「カモ類の鳴管の多様性」の鳴管に相当するものと判断
される。JOGAのページから写真入り概要が閲覧できます。

http://digitalcommons.unl.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1026&context=johnsgard
「Some putative Mandarin Duck hybrids」1968 Paul A. Johnsgard
University of Nebraska - Lincoln
ここにあるFig.2画像は前回記事で私が雄化オシドリとしたものにそっくりでしょう。
白黒の粗い画像ですが、著者のいうアメリカオシとの雑種とする根拠の他方の形質が
見られない、風変わりなオシドリの画像といった感じです。
一方、Fig.4の画像は私が過去に動物園のオシドリやオシドリ渡来地で雄化と指摘した
オシドリとほぼ変わらない外観をしており、白黒画像でも容易に雄化オシドリと判断可能
な個体です。

なぜ、私が上記2本の論文を紹介したのかというと、今から半世紀以上前に報告されて
いながら特定の方の意識の中にしか雄化という現象は存在しなかったからです。
もっと言えば、欧米に先行して雄化を報告した先達が日本に存在したのに、人々の意識
から半ば消え失せ、中途半端なオスの羽衣はすべてエクリプスだとして見て、見ぬ観察
をしてきた観察態度を至極残念に思うわけです。
あとの米国論文の推定は現在ではおそらく支持されておらず、明確なオシドリとアメリカ
オシの雑種はまず自然界に存在しません。同じ属Aixに含まれるのになんでや? そう
感じても不思議ではないですが、実のところ容姿は似ていても遺伝的には遠いのです。
以前にも書きましたが、欧米の雑種例紹介サイトや著作には飼育下での雑種研究成果
に基づいた雑種が掲載されています。なかには、それらの研究によって見出された貴重
な雑種も当然存在しますが、残念なことに、飼育下では雄化が起こりやすいとして慎重
に遺伝子解析するなどして得た証明の伴わないものが少なくありません。 つまり出生
したカモが親ガモと異なる外観だと、飼育下で交雑しえた異なる両親種間の雑種だと
勘違いし、雄化個体を雑種や色素異常個体と取り違えている例が見受けられます。
ともあれ、外国には雑種や色素異常等の変異個体について積極的に議論が交わされ
専門的なサイトも多数存在します。 しかし、ごく限られた人達のみが不思議な外観の
鳥達を正当に評価できるのには、きっと普通な鳥の普通な換羽を知っているかの違いで
なかろうかと思います。
オシドリとマガモの恋仲に関する観察例がネット上にはしばしば見られます。
マガモがアヒルだったりもしますが、実のところこれらの雑種は存在しません。
にも、かかわらず多くの方が雛を期待するのには、また事実と違う感情が作用します。

※ ここまで雄化について触れましたが、先日のオシドリについては継続観察しておられる
方がいて、数年に渡り越夏している個体がストレスによって頭部羽毛が抜けたものだとして
おられる方がいるようですが、私の耳にはなにも届いていません。
断定的な私の記事に対する嫌悪感から真実を告げられないでいるのかも知れませんが、
私自身も鳥全般はおろか生物・自然に対する知識は未熟で、未熟がゆえの誤判断も多数
あるかと思いますから、正当な反論は大歓迎です。とにかく生き物の不思議解明には常に
貪欲でありたいと思いますが、アマチュア特有の手段の貧弱さ、論理の組み立てには不備
も多いと思います。 前記事のオシドリに翼の異常は認められず、他個体が危険に反応し
飛び出すのと全く同一の反応を示し、翼異常の個体にしばしば認められる斜めスライド飛翔
も観察できませんでした。また、外観特徴には雄化を示す季節外換羽兆候や体サイズ等の
違和感があり、現時点では雄化との判断が最も適当かと考えています。
なにしろリトマス試験紙のように、抜けた羽根に検出液をかけたら色が変わり、生物学的な
雌雄が判定できるような便利グッズがあるわけではありませんから、過去に証明された事実
に現在の観察で得られた知識を照らし合わせ観察例を蓄積する以外方法がありません。

変カモ
すべての雄化に対する理解の開始点はこのヒドリガモとの遭遇でした。2008年10月

外国の画像で雄化した個体が雑種として扱われているとしましたが、実はこれらの境界が
外観からは容易に見抜けない、異なる性が同一個体上に再現されている変な個体でなくとも
雄化の疑いがある、殆どオスの外観を持ち、オスの嘴、オスの雨覆なんていうのもいるようで、
モザイク型雄化例ともども原因や外観は単純でない可能性があります。

哺乳類のいわゆる半陰陽と鳥類の雄化が似たようなメカニズムによるものなのか、一部は
同じで、異なるメカニズムが作用しているのか私にはわかりませんが、最初に出合った雄化
ヒドリガモの観察から過大なパーソナル・スペースを必要とし、餌に群がるような競合状態に
感受性の高い個体が、一定期間他のカモと過密な状態で過ごすとストレスから脳下垂体他
が障害を受け、その程度により雄化の進行度が異なると考えるのが合理的なように思います。
人間も同じですが、ストレスの感受性には個人差(個体差)があって、多くの人に適度な刺激
が一部循環器の機能が低下した方などには負担となり、そのような状態が長く続くといわば
自律神経失調症に陥り、重度の場合にはうつや視床下部障害が出るのではないでしょうか。
でも、この辺はずっと推測の域を出ませんが、人工的給餌環境の場所や飼育環境下で雄化
がしばしば見られるのは何か関連性があるように思えてなりません。
外部の認知も雄化も脳がなせる業のような気がしているのが、最近の考えです。

※ 4月9日追記
私の雄化オシドリ記事の写真だけ見て、仙人のような変わった外観のオシドリが雄化だと
判断されても困るので少し追加で書いてみる。

mandarin-f
2012年2月に「鳥と動物園」というタイトルで作成した記事中のオシドリ雄化画像です。

この前の記事とは頭部の雰囲気が随分違って羽毛はあるし、不完全ながら銀杏羽も存在
します。 外観上雑種と雄化と色素異常を確実に見分ける識別点があるんじゃないの?
そう考えている方がいるなら、それは違います。複数の異なる観察時期の羽衣比較から
可能性の高い個体に注目し、鳥体各部の特徴から判断します。 したがって、たった1枚
の画像で雄化が断定できるものと、そうでないものがあります。この辺はどんな鳥の識別
でも言えることですが、私が前回記事のオシドリを雄化と判断したのは次の理由です。

・撮影時期によって安定した繁殖羽の外観・色調に著しい変化が見られたこと。
これに尽きます。もちろん過去に動物園等で雄化他個体の観察経験があるというのも理由
のひとつですが、通例幼鳥を除いたオシドリが1月・3月の間で顕著な換羽もしくは羽衣摩耗
することはありません。ところが、該当個体は色調が淡色となると同時に頭部及び三列風切
が著しい摩耗によって脱落しています。正常な換羽による脱落ではないので、擦り切れたと
言う表現が適当です。 メラニン色素と雄化の間には一定の関連性があり、私はこれまでに
羽毛の白色部の耐摩耗性が他の部分より劣ることをカモの三列風切やカモメの初列風切等
で実際に見てきた経験があるからです。

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