をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

デンドロネッサ

デンドロネッサ なんやそれ? 普段から学名を気にしていない方にはアイクスでも
どちらでも関係なくてオシドリでええやん! そう思う方も多いはず。

Dendronessa galeriliculata  デンドロネッサ・ガレリクラータ は旧学名
Aix galeriliculata  アイクス・ガレリクラータは現行の学名です。
地球上の生物を含む多くの物質が世界共通の名前である学名をもちます。
ところが日本鳥類目録第7版の大幅な分類変更で属名の変更その他を受け
呼び方が変わったものも少なくありません。 学名は唯一無二の普遍的性格を
もつのではなく、生物の変容、それを分類・研究する人間によって変化します。
それはある意味分類の道具変化、分類への認識変化を裏付けるとも言えます。
鳥類でいえば、動物分類のα(アルファ)分類はほぼ完成しており、変化したの
はβ(ベータ)分類の学問的変化が改訂変更の大きな部分だったと山階鳥研の
山崎剛史氏は雑誌Birder2013年2月号で書いています。   分類体系とは
「仮説」なので知識の深まりによって分類が変われば、変化するともお書きです。
※ オシドリの学名は少なくとも第6版、第7版で変更されていません。

学名の変更に我々アマチュアが直接的に関わることは、まずないですが、その
方法や学名変遷の理由を知っていることは、無駄ではありません。
オシドリ、カルガモは本州以南では留鳥、北海道ではしばしば繁殖が目撃される
身近なカモであるので、それはもう生態その他知り尽くされている・・・はずなんだが
雌雄や幼鳥・成鳥の区別さえ大半のバーダーにも認識されていない。警察官に
見守られて移動するカルガモ・・・掲載されてるのはマガモの親子。 オシドリの
かわいい幼鳥が避暑地で見られました・・・実はオシドリのエクリプス。 この種の
誤認報道は毎年のように春から夏にかけて、しばしば目にします。
大手スーパーのランドセルのイメージ・キャラクターになっているカルガモ、鳥取大の
イメージ・キャラクター オシドリのとりりん。大衆にも広く認知されている、これらの
カモ達が冬場の姿だけで評価され、オシドリの雄は派手で雌雄差がハッキリして、
カルガモは雌雄差がなくて雌雄同色なんて・・・ホントにそんな認識で大丈夫?

最初に分類と学名に触れたので、「鳥類分類学と種及び亜種の問題」黒田 長久
山階鳥研報 第2巻第2号のなかで述べられているオシドリとアメリカオシの相違
について考えてみます。報文の作成された当時、昭和35年(1960年)の分類で
2者は学名から異なる属に分類され、P.82 種の総合的見方 で細胞遺伝学上、
習性上かなり異なるとしている。樹洞繁殖性という面では似ているものの、生化学
的性質(血清学的に卵蛋白質、血清蛋白質及びγグロブリン<表記改変>の差異は
マガモとペキンアヒルとの関係ほど近似し、Sibleyの卵蛋白検定もこれを支持。
形態的にはアメリカオシの方が一般の鴨型に近い原型的体格を保っており、雑種
が発生するのも、こちらに多く見られるが、オシドリにおいては他のカモ類どころか
アメリカオシとの雑種でも卵は孵化せず,生殖隔離を示す (Heinroth'58,etc.) と
している。「両者の類縁関係は細胞遺伝,血清,蛋白質,羽色,骨格,習性等の各々の
形質において親疎が入り混った綜合として実在するもので,雄の著しい違いは細胞
遺伝学的な結論と一致するが,一方雌の類似は生化学的な共通の保守的形質の
表型として保有されているかにみえる。」と原文で述べ、その理解・判断の複雑性
は総合的研究によって解明されるものとしている。
現在では1属2種(アメリカオシ、オシドリ)になっているAix オシドリ属の2種は
われわれ人類が人種・民族により病原体への感受性が異なるのと同じく、高病原性
鳥インフルエンザに対する感受性に差があって、感染時の死亡率はオシドリの方が
有意に低いことが環境省の報告で判明している。・・・下の資料より
環境省資料 I V. 高 病原性鳥インフルエンザと野鳥について(情報編)にある
IV.7. 野鳥を用いた感染実験で示された種による感受性の差について(P.91) 

【今頃のオシドリ外観 ~夏のオシドリ~ 】
夏場にオシドリが観察できる場所は森林に近い渓流があって繁殖に適したウロを
もつ大木があるか・・・、人為的繁殖を過去に試みたことがあるか・・・等地域・地方
で異なります。大阪ではオシドリが繁殖しやすい渓流や大きなダム湖がそれほど
ないので、過去の繁殖例も北部の能勢町のものがわずかに知られるだけでしょう。
それだけにこの時期のオシドリ観察は難しく、仮にそのような機会に恵まれても、
特有の警戒心から間近で観察することの困難な種です。 北海道や上高地等で
オシドリ親子を見たことのある方には、「えーっ、ウッソー!」という驚きが聞こえて
きそうですが、留鳥とされるオシドリの夏場の生息域は一般に都市部のある平地
からは離れて存在するものです。(北海道は除く) 稀に繁殖に参加しない雄成鳥
や飛翔可能となった幼鳥が単独で都市部に出現することもあります。

メス幼羽
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大体8月頃の幼鳥(幼羽)の外観予想です。へたくそな画像で申し訳ないですが、
写真がないので手描き画像を写真撮影したもので、説明します。
幼羽のオシドリと成鳥のオシドリ。この時期はどちらも雌に似た外観ですが特定の
部位に着目することで、見分けられるものと思います。 それはマガモ属水面採餌
ガモと共通の部分もあれば、種特有の部分もあります。

○ 嘴の色
基層色 標本になった死んだカモの嘴の色です。生体色素は死亡とともに急速に
失われ、オシドリでは象牙色というのかクリームベージュの色でしょう。
成鳥色 オシドリ雄の冬場から春への鮮やかな紅色で、カロチン系食餌に由来?
通例雄に顕著な紅色ですが、一部の雌や雄化雌、色素異常個体では目立つ。
メラニン色素 鳥類全般の体色や裸出部の色を決定づける、太陽光から体細胞を
保護し、構造色のベースとなる黒色、褐色系色素。 成鳥雄の冬場、繁殖羽時期
に最も黒色メラニンは少なく、幼鳥のメラニン色素産生も成鳥ほど多くない。なので
冬場の雌成鳥の嘴が最も黒っぽく、夏場の雄成鳥、次いで幼鳥と続くようで夏前
のエクリプス時期の雄成鳥嘴は赤味があるものの、かなり黒っぽい。
以上のような色素構成により、雌の幼鳥ではメラニン、成鳥色の産生が少なく、基層色
が透けて見える結果かなり褐色調の黒灰色をしているのが普通。

○ 頭部
冠羽やヒゲ状羽は短く、頭側上部と頬では灰色の濃淡差がほとんどなく、べたっと灰色。
雛つまり幼綿羽時点での過眼線が比較的明瞭に残存する結果、白色のアイリングは後方
で途切れC字状に見えるものが多く、その下に過眼線に沿って伸びる白線は比較的明瞭
ながら、冬場の雌成鳥ほど太くハッキリしていない。
また嘴基部に見られる白色斑は成鳥に顕著で、これが明瞭であれば雌雄共に成鳥と推定
して問題ないと思われる。雌幼鳥ではこの嘴元白斑が見られないか、ごくわずかです。

○ 頸・胸部、脇羽
日本語では脇羽(横腹に見える羽毛)と腋羽(翼下面基部の羽毛)が同音であるので注意。
雌幼鳥の幼羽では頸から胸部にかけて前方からは放射状に見える縦斑が最も明瞭。これは
杉綾模様のような小さな斑が暗色の背景に連続するからで、成長とともに斑が大きくなると
杉綾斑が大きくなって縦斑状から点状模様に変化して見える。 また、上段脇羽上部縁には
白色のやや目立つ羽縁が見られ、これが肩羽との境界線で一列に並んで見えることが多く、
見え方によっては白線に見える。これより下の脇羽は小形なので並んでも白線状に見える
ことは少なく、雌幼鳥では羽縁白色部が成鳥より小さいため、換羽進行した冬場以降でも
白色円形斑として見えることは少ない。特に幼羽時点では不明瞭な筋状白斑となる傾向が
強い。上背・肩羽と脇羽の明度差が少なく、頭部特徴同様全体的にべたっとして見える。

○ 足の色
成鳥雌雄でも色彩に差があるが、幼鳥でもかなり時期によって差がある。
幼羽幼鳥では雌雄共に黄色味のある灰色であるが、雌幼鳥ではかなり灰色味が強い。
ただ、みずかき部分の膜は幼鳥・成鳥共に黒っぽい灰色。 冬場になると、雄は橙色味
が出てきて、雌は灰黄色になる。

オス幼羽
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○ 嘴の色
雌幼鳥とは異なり、幼羽へ換羽が終了するころから紅色味が強くなり、雄成鳥冬場の
色ほど鮮やかではないが、ピンク色のようなややくすんだ紅色。

○ 頭部
冠羽やヒゲ状羽は短く、頭側上部と頬では灰色の濃淡差がほとんどなく、べたっと灰色。
やや雌より濃い灰色の頭部をしていることもあるが、C字状アイリングや後方に伸びる
白線が雌成鳥ほどでないがやや明瞭なのも幼鳥の特徴。嘴元白斑が見られないか、
ごくわずかなのも雌幼鳥同様、幼鳥に特有。
WATERFOWL(Houghton Mifflin) / Wildfowl (Helm)では幼鳥がキンクロハジロ幼鳥の
ような外観に描かれているのは問題。

○ 頸・胸部、脇羽
脇羽上段羽縁白色部が並んで白線に見えるのは雌幼鳥同様だが、羽縁形状が尖るので
三角形白斑がシャープに行列している感じに見える。 頸。胸部の斑が縦斑状に見えるの
も共通だが、こちらは雌により顕著に見える。第1回繁殖羽に移行していく段階でもまだらに
見える紫藍色となって結構目立つ。胸部の紫藍色と脇羽の黄褐色の境界部分にある黒線
は移行羽でも最も初期に現れる特徴。

○ 足の色
幼羽期にはバナナ色だが、第1回繁殖羽に移行した頃には薄い橙黄色となっている。

★幼鳥、秋の画像
お隣の韓国、BIRDS KOREAにオシドリほぼ幼羽の画像があります。
Birds Korea's Bird News Novenber 2008
赤色嘴タイプの雌か雄1Wかとして意見を求めていますが、雌雄幼鳥ですね。
雄は胸部と腹部境界に黒線が出現し始めているのが確認できるかと思います。

メス成鳥
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○ 嘴の色
雄成鳥同様6月から8月頃、雛を連れている時期の雌成鳥の嘴は最も黒っぽい。これは
成鳥色が抑制され、強くなる太陽光の紫外線に対応した変化だろうと考えられ、冬場には
時折見られる紅色傾向の強い嘴をもった個体も減少するためだと考える。若い雌には嘴
基部上面が黄色味を帯びることが多いのは、成鳥色が抑制され、メラニン色素の産生量
も少ない結果、基層色が透けているものと考えられる。

○ 頭部
幼鳥に比べて冠羽、ヒゲ状羽は明らかに長い。頭側部上面と頬の灰色濃淡差も成鳥雄
ほどではないが、幼鳥より明瞭。アイパッチ=アイリングと後方に伸びる白線の複合白線
も冬場の雌よりは細く不明瞭で若い雌では幼鳥時に見られる過眼線が夏場に出現する
傾向が強い。嘴元白斑は明瞭なことが多いが冬場ほどに太くなく、特に若い雌では明瞭
さを欠くものもいる。

○ 頸・胸部、脇羽
雌成鳥の脇羽に見られる白斑は大きく、円形白斑に見えることが多く、これらは冬場には
より明瞭で夏場には境界がやや不明瞭となる。胸部の斑は若い雌で縦斑状に見えること
も多いが、比較対照することや嘴元白斑や脇羽白斑状態と併用することで区別できる。

○ 足の色
ややくすんだ黄色からクリーム色、夏場には灰色味を増すことが多い。

オス・エクリプス
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○ 嘴の色
雄の嘴は赤い。 この説明が多くの誤解を生んできた。エクリプスへと向かう時期の雄
成鳥の嘴は赤黒いと表現するのが適当。赤い嘴を求めてある者は雄幼鳥を、またある
者は雌が雄化した個体を、色素の減弱した個体をエクリプスと判断してきた。
これらの誤認は理解が進む一時期にあっては不可解でもないが、望遠鏡やカメラの技術
改良の進んだ現在も変化していないことに、一種の憤りを覚える。
繁殖羽となった冬場1月から5月頃には真っ赤な嘴をした雄もいるが、多くの場合メラニン
色素も同時に存在し、個体によって赤味に幅がある。
叶内氏がその著作で使用している雄エクリプスの画像は叶内図鑑・カモハンドブックも含め
雄化雌です。 また、教科書その他に画像を提供している越智伸二氏のNature Photo Gallery
にあるエクリプス画像も雄化雌です。氏のHPへの連絡にはフリーメールが拒否されますので
連絡がとれません。雄幼鳥と誤認している方はあげるとキリがありません。
国内では雄化雌がエクリプスと誤認されることが多いのですが、外国ではアメリカオシとの
雑種として紹介されることが多いです。以前に書いた雄化オシドリ記事でも紹介していますが、
「Aix galericulata qtl3.jpg」 WIKIMEDIA COMMONS
「Mandarin Duck (Aix galericulata) 」 The Internet IBC bird collection  も同様雄化雌です。

○ 頭部
換羽の進行度にもよるが、雄頭部の頭頂を含めた上方は頬の灰白色と著しい濃淡差があり
しばしば光沢を帯びる。 冠羽、ヒゲ状羽共に長くエクリプスに至る時期には部分的に栗色を
残す。雌成鳥同様に嘴元白斑が見られる事が多く、若い雄に不明瞭な個体もいるが、繁殖羽
となっても嘴基部に白斑があって白色勾玉形状の目先赤褐色部へと繋がる事が多い。特に
上で述べた雄化雌の判断には白いひげが重要で、他種の雄化同様、年間を通じていわゆる
亜繁殖羽である状態が多く、正常雄のような明瞭な時期による換羽がない。色彩の彩度が
低く灰色味が強い、銀色味を帯びて金色味が少ないなどの特徴がある。

○ 頸・胸部、脇羽
頸・胸の縦斑はほとんど感じず、点状あるいは格子状の斑に見えるものが成鳥では多い。
脇羽の白色部は雌成鳥同様広いが円形にクッキリせず、筋状白斑が複雑に重なり筋模様
に見える。幼鳥と比べて脇羽の褐色味が強い。

○ 足の色
夏場はやや灰色味を帯びてくすむが、繁殖羽である冬場は鮮やかな橙黄色~橙色。

以上、写真が一枚も登場しなかった記事だが現時点で私の考えうるオシドリ雌雄、成幼の
夏の姿を説明したつもり。自身の知識の整理のためにも一度記事にしておこうと思った。
日本オシドリの会が最近資料集を出したようですが、資料2は既に入手不能で、資料1・3
も見ていないので、書かれているとするなら、資料2に詳しい記述があるのかも?

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