をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

灰色夏モズの正体

モズは大阪府の鳥でもあり堺市の鳥でもある。
鳥を観察し始めた当初、飛来・求愛・営巣を3年間に渡って観察した
身近な鳥でもあったのです。
また、過去に大泉緑地のモズ調査が山岸哲氏の著作「モズの嫁入り」と
して公表され、大阪市立大学の高木氏はモズ類研究で知られる。そんな
モズに所縁の深い、堺市の平地でモズを見てきて思うことがある。

夏に見ることがあり、褐色のモズと時季を違えて遅くに繁殖するモズは
一体何モズなのだろうかということ。
多くの方は、それは「高原モズ」と言って、退色・摩耗したモズの夏羽に
起因するもので、高原でよく観察されることからその名があるらしいが、
2月頃から繁殖に入ったモズが、初回の繁殖を平地で済ませ2回目以降
高地や北方に移動して繁殖するのだという推定に基ずくものとする。
過去の野鳥雑誌やバードリサーチ生態図鑑のモズを担当した前述高木氏
の解説にもそのような記述が見られる。
モズは  英名 Bull-headed Shrike 学名 Lanius bucephalus ラニウス
ブケパルス
国内で確認されているモズ類は他にアカモズ、亜種シマアカモズ、チゴモズ、
オオモズ、オオカラモズ、タカサゴモズ、セアカモズ、モウコアカモズ・・・等が
いるようですが、大阪で観察できるのはほぼモズの基亜種 L.b.bucephalus
のみで、シマアカモズを一度観察したのみです。
高木氏はモズ類の説明で、大形のモズは性的二型が不明瞭、対して小形のモズ
つまりは日本在来の普通のモズ等は性的二型が明瞭であると指摘しています。
(雑誌 Birder 2013年12月号「モズ類の新しい見どころ、教えます」)
確かに性的二型は明瞭な部類ですが、初列風切の白斑がオスであることの確定
要素などと考えていると、大間違いです。メスにもこの白斑を小さいながら持つのは
結構いて、一部の図鑑では雨覆にバフ斑がないメス成鳥をオス第1回冬羽などと
しているものも見受けます。 同様に、アカモズやセアカモズ等通例はこの白斑が
見られない種に小さな白斑が見られることもあります。 モズ類はスズメ目の鳥に
あって異例とも言える雑種の多い仲間であるのではないでしょうか。

過去の観察から幾度も現れては消えて行った、雑種に起源をもつ別グループの
侵入説は成り立たないのか?といった思いが今回も強くなった。  それは、また
フィールドガイドにある高野氏のモズ類のレイアウト画像から。
灰色味を帯びたモズが通常モズの隣に描かれていて、下段に描かれているオス
シマアカモズとちょうど中間の姿形に描かれている。嘴の嘴峰、嘴底がやや丸味
を帯び、先端のカギ状部が控えめ、目先の黒色部が太い過眼線、薄い眉斑を
特徴とするシマアカモズとの中間の形態に描かれていて、夏場に見る灰色モズ
の特徴をよく捉えている、初列風切の白斑が小さめなのもよく一致する。
要するに、単に摩耗・退色した羽衣が灰色となったという違い以上の多くの相違
が認められるのに、「高原モズ」として片づけてしまうのは少し乱暴ではないか?

早春に大阪付近で繁殖したモズは次第に高地伝いに北海道付近辺りまで北上、
北海道で夏場に繁殖しているモズは頭部がさほど灰色になっていないのでは
ないか?これが移動したモズ達の姿ではないか?
では、大阪の平地ではごくわずか、高原で目撃される灰色のモズは何か?と
いうと、大阪で早春に繁殖したモズ達に代わって、南方あるいは、それらとの
間に生まれた雑種系統の一群で、幼羽も冬羽も新羽の時点でほとんど灰色の
羽衣を持ったグループの可能性が高い。この系統は現在も北上を続けていて、
20年もすれば、夏に灰色の羽衣のモズが平地で繁殖することが稀ではなくなる
そんな気がするのです。少なくとも過去に観察した夏のモズは灰色味が極めて
強く、多少なりともシマアカモズの雰囲気を持っていたし、摩耗でなく換羽直後の
羽が既に灰色の羽であるというのが、摩耗退色説を否定したい要因です。
ただ、この説を強硬に主張するほど、夏モズの観察・特に繁殖後継続観察例は
少ないのですが、最近の目撃例を元に推理してみました。

「シマアカモズの繁殖について」 鳥25(99)1976 今村京一郎 著
モズの北方域でオスが多い傾向は過去の唐沢氏や最近のバードリサーチの
調査で判明しています。カモ類でも分布に性差がありますが、この分布の疎密
それに温暖化や雑種系統の侵入が原因とは考えられないでしょうか? 
かつてメジロガモがアカハジロと交雑していることがしばらく気づかれなかった
(一部、現在でも)ように、実際は交雑を介した北上が既に現実となっている?
のでは。
でも、専門家が指摘していないことですから、根拠は希薄と言わざるをえません。

【夏モズ=高原モズ、モズが摩耗退色して灰色になったを証拠づけるには】
早春に繁殖してゴールデンウィーク頃にはいなくなってしまうモズが高原に移動
第2回目の繁殖をしたという確実な記録が必要。 標識調査によって北海道で
繁殖した個体が九州に移動したこと、長野県野辺山で夏に標識した雄が翌年
夏に徳島県鳴門市で捕獲、兵庫県姫路市で秋に標識した雌が翌年夏に長野
県野辺山で捕獲されている記録がある(雑誌Birder2005年10月号)が何れも
直接的に異なる2点で移動後繁殖した事例ではない。1991年から2004年に
かけて600羽以上のモズに個体識別用カラーリングをつけて放鳥した今西氏
(当時山階鳥研研究生)はその雑誌のなかで、雌の事例はこの高地移動繁殖
を裏付ける可能性があるとしているが、報告文中終盤で「きままな途中下車繁
殖」をすると書いていることが単に年度を変えて「途中下車繁殖しただけ」結果
ともとれる。つまりは、これまでどのような標識個体報告でも、早春に茶色い頭
で繁殖した雄が高原に移動して灰色頭状態で再度繁殖したという直接観察記録
は存在しない。また、高地繁殖後の冬羽への換羽により、移動前に褐色頭部の
モズが目撃されないのは不自然な事と思う。

【早春に繁殖するモズと夏に繁殖する本州のモズは別グループ?】
これを裏付ける証拠は上に挙げた、北海道で繁殖した個体が九州に移動して
越冬した事実。夏に北海道を訪問してモズを観察した例は2000年台初めに
経験しているが5月から8月に出合ったモズは何れも灰色の頭部ではなく、
茶色の頭部をしていた。これは、摩耗によって夏羽が灰色に変わるという摩耗
退色説を否定できる要素ではないか?上に挙げた雑誌表紙の雄モズは5月に
北海道石狩市で撮影されたものであるが、嘴は繁殖期を示す上下真黒だが
頭部は極めて茶色味が強く、目先の過眼線も黒い。これは5月以降大阪周辺
で観察される雄モズと明らかに異なる。
私は夏季の雄モズは明らかに外観の異なるグループとしているが、雌モズに
関しては在来のモズである可能性を否定しない。それは上で述べた雌雄分布
に差があるからで、隣接する南方域の亜種あるいは交雑グループの雄が北上
本州付近で交雑帯を形成しているのではないかと思えること。そのため平地の
モズも高原のモズも南方から北上してきた夏鳥であるモズの集団(灰色モズ)
ではないだろうかということになります。
あと一点挙げるとすれば、早春に繁殖して嘴の色が繁殖モードの黒になった
雄が何のためわざわざ移動や縄張り獲得コストをかけて再繁殖する必要が
あるのかということ。やはり早春のモズと夏のモズは異なる別グループと判断
した方が考えやすい。 モズは年2回の換羽ではなく、幼羽からの換羽も成鳥
冬羽への換羽も夏に行われることが知られている。嘴形状と色、大きさと翼の
白斑有無、尾羽外側の白色度、過眼線の目先側の広さと濃さは種や相違を
知るために必須の確認ポイントでしょう。

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