をかしの庭

なにげない日常の中にも、心ときめく現象や出会いがあります。 遠くに出かけずとも、内面に大きく語りかける身近な映像、そんな写真がお届けできれば良いのですが…。

トモエガモ雑種の真性と偽性

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見せて頂いた動画から描写したオナガガモとヒドリガモの雑種雄、三重県2月

今期のカモ観察での最大イベントはもちろん氏原さんの「日本のカモ識別図鑑」が
発行されたこと。この図鑑によってカモに対する意識が変わった方も多いはず。
一方個人的にはこれまでで最もカモ観察、というより鳥見に出かける時間自体が
制約を受けて少なくなったことで、予定した観察の大半が未消化に終わった。

本日の話題はマガモ属雑種にしばしばトモエガモの顔模様の雑種が出現。殆どの
例でこれまでトモエガモの関わった雑種とされていたものが、実は違ったと認識を
新たにされた方も多いはず。これまで巷で取り沙汰された「マトモガモ」なる雑種が
実は想像上の雑種でまともなはなしではないと図鑑からは読み取れる。 一方で
国内で未確認とされていた雑種が相次いで確認された。この発見・確認には若い
鳥に興味のある方達の貢献度が高く、今後の活躍に期待できる。

【トモエガモの関わった雑種とそうでないものの顔模様】
雑種を考える上でマガモ属の中央尾羽の長さに関する問いをひとつ。
Q. 次にあげるマガモ属のカモ中央尾羽の長さ(尾端からの突出長さ)を順に並べて
ください。
 
 ・ヨシガモ  ・オナガガモ  ・ヒドリガモ  ・ハシビロガモ

私の考える解答は最後に記しますが、普段意識して観察していない方には、こんな
質問でも自信をもって答えられないのではないでしょうか。

ここで本題のトモエガモに似た顔模様、ここではフェイスパターンと呼ぶことにします。
本当にトモエガモが関わった雑種となんら関係のない雑種に違いはあるのでしょうか?
私にはある程度の明確な違いがあるように見えます。カモ識別図鑑をお持ちの方は
その雑種ページを開いて見比べて頂きたいのですが・・・

◎本当にトモエガモの関わった雑種
頭央線と頭側線を区切る淡色線が真性のトモエガモ雑種には存在します。
ただし、アメリカコガモやコガモの関わった雑種にもこの淡色線が存在しますから、
・ 涙斑が同時に観察できるか
・ 淡色の頭側線が目先で収束するか開放するか判断する必要が生じます
トモエガモの関わった雑種では目先で頭側線が収束、嘴元付近で左右の線が
合流したように見えるがコガモ系雑種では目先で途切れます。

じゃ、なんでトモエガモの関わっていない雑種に似たようなフェイスパターンが出現
するのか?といった疑問にはどう答えるのか。 多分ということになりますが、分化
つまりマガモ属のカモ達が種分化してきた過程において、先祖に相当するカモの
形質にこのような特徴があったのではないかと推定できます。 現在ではフェイス
パターンとしてトモエガモ同様の涙斑を有するマガモ属のカモは稀ですが、共通の
祖先には存在しており、ほぼトモエガモだけがこの祖先伝来の顔模様を色濃く受け
継いでいると考えるのです。その結果観察することの多いマガモとカルガモの雑種
雄にさえトモエガモの涙斑状顔模様をもった個体が観察できます。
ただし、これらの特徴は雄の繁殖羽で見られる特徴なので、雌の雑種や雄化、
色素変異などの他要素が絡んでくると一筋縄ではいきません。

もう一点、本日冒頭のカモ画像には不明瞭ですが白い胸側線があります。
白い胸側線をもつマガモ属のカモで思い浮かぶカモはアメリカコガモでしょうか?
それともトモエガモでしょうか? 冒頭の画像のカモはどちらも親にいません。
なんで? これもおそらく理由は上で述べた内容と同じです。 ただ、特定の
組み合わせの場合にしか出現しないので、メンデルの法則に似た優性・劣性の
ような遺伝的要素が関与しているのかも知れません。
実は過去にこの組み合わせと思われる雑種が大阪の淀川水系の河川で観察
されたことがあり、単純で不勉強な私はアメリカコガモの関わった雑種あるいは
3種が関与した雑種(trigen)と考えていたところ、氏原さんのブログによってその
推定に問題があることに気づきました。 今回貴重な三重県での観察情報を得て
おきながらすぐに行動できず、ようやく時間の取れた当日は深い霧で観察困難で
霧の晴れた午後も発見には至らず、残念な思いをしました。
これだけではなく、奈良県のアカハジロ雑種は複数回の峠越え、京都のクビワ?
キンクロは不在で観察できず、遠出は困難の連続でした。

問いの解答ですが、名前通りオナガガモ成鳥繁殖羽の中央尾羽が最も長く、次いで
ヒドリガモ、ハシビロガモ、ヨシガモと続きます。
図鑑には尾羽を開いて飛ぶ各カモの図版がありますから見比べてみてください。
冒頭のカモ雑種は尾羽の長いカモの組み合わせですので当然尾羽の長い個体が
マガモの絡んだ雑種ではカールした中央尾羽をもつ個体が誕生します。

※ 書き忘れていましたが、トモエガモの関わった雑種では普通は黒い涙斑が
白く(淡色に)抜ける場合があります。また、嘴の色素の下地隠ぺい度は有彩色、
あるいは灰色の場合に黒色無彩色より低く、これらの有彩色、灰色嘴の親から
生じた雑種では灰色でもなく片親の赤や黄色でもない肉色嘴の雑種ができること
があります。
onagahidori418
3度目の正直で観察できたオナガガモ×ヒドリガモ雑種雄 4月18日
やっと出合えた歓喜は一瞬で落胆に。見つけた途端に他のカモが飛んでそれに
つられて沖へ飛んで行ってしまい、撮影できたのは2カットのみ。

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